④ 限界費用ゼロではアメリカのGAFAMプラス2の巨大利益は説明できない(図1)。

彼らの提供するものに無料もあるが、その周辺に張り巡らされた有料のネットワークの存在は無視できない。著作権などの法律、業界の慣習などが高収益の支えになっているのは、リフキンも気が付いている。

「業界の大手は、市場優位性を得て独占支配力を確保し、自らが販売している製品の限界費用より高い価格で販売しようとするだろう。」(P.19)

⑤ 情報化の進展で資本主義はおしまいとリフキンは主張するが、そこに至る(?)過渡期で現実に生じているのは様々な位相の二極分化である。大企業と小企業、大企業のなかでもITの恩恵を受けた勝ち組とそうでない負け組。人々レベルの格差と都市と地方の格差の拡大が目につく。

ゼロの焦点

限界費用ゼロを論理の起点としてリフキンは突き進む。

「財やサービスを生産する限界費用がさまざまな部門で次から次へとゼロに近づくなか、利益は減少し、GDPは減少に転じ始めている。」(P.40)

「GDPという基準は今後数十年の間に、市場交換経済が縮小するにつれ、経済的指標としての重要性を失ってゆく可能性が高い」(P.41)

理想主義的な思考様式を持つ論者に共通なのかもしれないが、リフキンは自分の構想した終着駅に早々と降り立ち、そこでの景色を描こうとする。終着駅にはコモンズという看板が掲げられている。これが本書の後半のテーマとなる。

市場からコモンズへ

市場というのは諸資本が競争する市場である。そこで価格競争が展開し価格が決まり、勝者と敗者が決まる。ダーウィンの理論を曲解したスペンサー※)は社会進化論を主張し、適者生存・弱肉強食こそ進化であるとした。

※)Herbert Spencer(1820〜1903)、イギリスの哲学者。ダーウィンの進化論を社会科学に展開し、社会進化論を呈示。日本の明治維新にも影響を与えた。