古い話になるが、1990年のW杯イタリア大会決勝、西ドイツ代表対アルゼンチン代表(1-0で西ドイツ優勝)のNHKでのテレビ中継で解説者の釜本邦茂氏の横に座ったのは、1988年まで読売ジャイアンツの監督を務めていた世界のホームラン王、王貞治氏だった。
当時ですら「元プロ野球選手がサッカー?」と首をかしげた人は多かったはずで、現在だったら炎上案件となること必至だろう。しかし残念なことに35年経った今でも、メディアの思考回路は停止したままだ。
日本代表はW杯初出場を決めたフランス大会のアジア最終予選では、カズことFW三浦知良(現アトレチコ鈴鹿)が不振に陥り、加茂周監督が途中解任された上、1997年10月26日に国立競技場で行われたUAE戦で引き分ける(1-1)と約5,000人にも上るサポーターが暴徒化。カズの愛車にイスなどを投げ付け、激怒したカズは「俺が直接話してやる」と言いながらサポーターに突っかかろうとしてスタッフ総出で止めに入った。
もちろん許されることではないのだが、今、日本サッカー界にあの頃の熱はあるだろうか。大谷の一発に歓喜する野球ファンの姿を見ていると、かつてのW杯予選で帯びていた熱狂が懐かしく感じてしまう。