それだけ日本サッカーが成長したことの証しともいえるが、皮肉なことにアジア枠の拡大によって、最終予選のヒリヒリ感が削がれてしまった側面はあるだろう。「勝って当然でしょ」という空気がメディア露出の妨げとなっている感は否めない。今の若いサッカーファンに「日本が出場していないワールドカップを想像せよ」と言っても難しいのではないか。


堂安律 写真:Getty Images

堂安律「僕たちがW杯を優勝した時には…」

そんな中、16日にドイツから帰国した日本代表MF堂安律(フライブルク)は羽田空港で囲み取材に答え、日本中を覆う大谷フィーバーについてコメントを求められると、「スポーツ全体が盛り上がっていくのはいいことだと思うので、切磋琢磨し合いながら負けないように頑張りたい」と冷静に語った。

堂安自身、巨人ファンを公言する野球好きとあって大人の対応に終始したが、彼のような選手ばかりではない。あまりにもサッカー選手に対するリスペストに欠け、不躾ともいえる野球の話を振られることで不愉快な気持ちになる選手もいるだろう。

堂安は次のようにも語っている。「もちろん野球の凄さというのは僕がヨーロッパに行ってからも日本の盛り上がりを知っているし、それくらい凄いことをしているのは事実だと思う。ただ、僕たちがW杯を優勝した時には同じくらいの反響があると思うので、僕たちはそれに向けて準備をするだけ。スポーツ全体が盛り上がっていくのはいいことだと思うので、切磋琢磨し合いながら頑張りたい」

この言質に倣えば、「大谷来日」と「日本のW杯優勝」がニュースバリューとして同格ということになる。つくづく、日本は野球の国であり、サッカーはその後塵を拝していると痛感させられる。代表チームやJリーグは世界と比べても遜色ないレベルに達しつつあるが、それを報じるテレビや新聞といったメディアが、日本サッカー界の成長に付いていけていないことを露呈しているとは言えないだろうか。


FIFAワールドカップトロフィー 写真:Getty Images

「見たことのない景色を見せるには」