気まずい空気になるばかりでなく、魚が警戒してお互いに釣れなくなることも多く、誰にとってもメリットのない行動である。

釣り人同士が気持ちよく川を共有するためには、以下の基本マナーを意識しておきたい。

基本は「釣り上がりスタイル」

渓流釣りは入渓場所から釣り上がって行く「遡行スタイル」が基本。もし入渓したいポイントに先行者がいた場合、最低500m、出来れば1km程度の距離を空けて入渓したい。

それも、可能なら下流側から入渓するのが暗黙のマナー。小規模河川の場合はポイントが非常に限られてしまうため、別の川に行くなどの配慮も必要だ。

釣り降る場合の注意点

場所によっては釣り降り(下流方向に向かって釣っていく)を行いたいこともあるだろう。仮に釣り降りを行う場合は、下流側にも1km程度に渡って人がいないことを確認しておく。下流側に人がいるにもかかわらず釣り下ってしまえば、遡行中のアングラーと正面衝突することになる。

混雑が予想される人気河川では、そもそも釣り下りを選択しない方が無難だ。解禁日、禁漁直前、放流直後などの時期は特に混雑するため、他の川への移動も視野に入れておきたい。

万が一追いついてしまったら?

慎重に距離を取って入渓しても、状況によっては先行者に追いついてしまうことがある。その場合は、声をかけて下流側から静かに脱渓し、別のポイントへ移動するのがマナーだ。

絶対にしてはならないのが「追い越し」。これはルール違反以前に、釣り人同士の信頼を損ねる行為であり、場合によっては現場での口論に発展することもある。

すれ違いを避けるために

最近ではSNSやYouTubeなどの影響で、特定の渓流に人が集中しがちになっている。事前に釣行予定の河川について情報収集を行い、「混雑しにくい時間帯・支流」を選ぶ意識を持つだけでも、トラブルの多くは回避できる。

渓流釣りは一見静かに見えて、実は非常に繊細な釣りだ。その場の空気感や魚の警戒心、自然との距離感、そして「人との距離感」が釣果を大きく左右する。