一方で、より興味深い結果が示されたのは、「副反応はむしろワクチンが効いている証だ」という認識を持っていた人たちに関する部分です。
「もし熱や頭痛が出ても、“自分の免疫が全力で働いている証拠だ”とポジティブに受け止められる」という姿勢があると、長期的に見ると1か月後や6か月後の抗体価(ワクチンがどれだけ免疫を高めているかを示す値)が高くなるという傾向が見られました。
つまり、「副反応=悪いもの」と思い込むのではなく、「ちゃんと免疫が作られているんだ」と前向きに捉えるだけで、体の反応がさらに後押しされている可能性がある、というわけです。
しかも、この“副反応は効いているサイン”というマインドセットは、実際に副反応が多く出る人ほど強いわけでもなく、経験した副反応の程度とはあまり関係がなかった、という点が非常にユニークでした。
「副反応が出ても出なくても、自分の中ではそれを前向きに解釈しよう」と構えている人ほど、接種後の抗体量がしっかり上がっていたようなのです。
一見すると「それは思い込みでは?」と感じられるかもしれませんが、研究者たちは、こうした“心の持ち方”が健康や治療効果に及ぼす影響が、実際に測定した生理学的指標(抗体価)ともリンクしていることに驚きを隠せない様子でした。
もしかすると「ポジティブに捉える人」は、接種後に適度に休養を取ったり、体を冷やし過ぎないよう気をつけたり、周囲のサポートを上手に利用したりするのかもしれません。
あるいは、脳や神経、ホルモン系の調整が働いて、自然治癒力や免疫力を高めるシステムが促進されている可能性もあります。
いずれにせよ、結果からは「ワクチン接種を受けるときの心理的な態度」が身体に影響を及ぼすことを示唆しており、研究者自身も「心理要因は決して無視できない」と再認識したといいます。
「思い込み」が身体や免疫反応にまで影響を及ぼす背景には、人間の脳や神経系と、免疫・ホルモン系が相互作用する仕組みがあると考えられています。