一次エネルギー供給とCO2排出量はWEO2021から毎年「下げ」方向に変化(シフトdown)しており、発電電力量のみがWEO2021から毎年「上げ」方向に変化(シフトup)している。
WEO2021~WEO2024で「経済成長に伴ってエネルギー需要も電力消費も過去の増加トレンドを継続するが、CO2排出量だけは過去の増加トレンドから決別して減少する」という傾向は共通である一方で、「エネルギー需要の増加はGDP成長率の低下に伴ってより小さくなりつつ、より大きな発電電力量増加により、より大きなCO2排出量減少が実現する」という一定方向へのシフトが示されている。
電力、特に中国の電力に注目
発電電力量のシフトupとCO2排出量のシフトdownの背景には、何があるのだろうか。WEO2021~WEO2024 STEPSの電化率(最終エネルギー消費に占める電力の割合)と電力CO2排出係数を算定・比較してみた(図2)

図2 WEO2021~WEO2024 STEPSの電化率(左)と電力CO2排出係数(左)
左図の最終エネルギー消費の電化率はシフトupしており、WEO2024の2050年値32%はWEO2021に比べて2割以上高い。即ち、エネルギー消費における電化の大幅な進捗が発電電力量の大幅シフトupの原因である。
一方で、右図の電力CO2排出係数はシフトdownしており、WEO2024の2050年値はWEO2021に比べて4割程度低く、現状の1/4である。
つまり、図1に示したCO2排出量のシフトdownは、「電化率の連続シフトup」×「電力CO2排出係数の連続シフトdown」という合わせ技なのである。
次に、世界の発電電力量の約3割を占める中国に注目してみる。中国の太陽光発電(2022年の世界シェア35%)、石炭火力発電(同55%)のSTEPSの発電電力量は、WEO2021~WEO2024で図3のように変化している。
