SSPやRCPとは、将来の温室効果ガス排出量を決める「仮定された未来」の代表的なシナリオである。

RCP(代表的濃度経路) は、2010年代まで使われていた枠組みで、「2100年における放射強制力(W/m²)」を基準にシナリオを分類している(例:RCP8.5は非常に高排出な未来、RCP2.6は厳格な対策をとる未来)。

SSP(共有社会経済経路) は、その後導入された新しい枠組みで、経済成長・人口動態・技術進歩・政策協調などの社会経済条件を組み合わせた「社会の未来像」である。これにRCP的な排出経路を組み合わせることで、より多様なストーリーをモデル化できるようになっている(例:SSP1-1.9、SSP5-8.5など)。

しかし、これらはあくまで“未来の仮定”にすぎず、どの道筋が現実になるかは誰にもわからない。それにもかかわらず、特にRCP8.5やSSP5-8.5のような極端シナリオが「最も起こりうる未来」として扱われることが多く、過剰な温暖化予測の温床になっているという批判もある。

ジュディス・カリー(元ジョージア工科大学気候学教授)は「気候モデルは未来を予測するものではなく、可能性のシナリオを提供する道具にすぎない」と述べている。また、MITのリチャード・リンゼン教授も、「モデルは実際の気候感度より過剰に反応しており、気温上昇の過大評価につながっている」と指摘している。

モデルと現実の「乖離」

現実の気温データとモデル予測値には、顕著なズレが見られる。特に1998年以降の約15年間、実測気温はほぼ横ばいだった(”Hiatus”現象)。しかし多くのモデルはこの間も直線的な上昇を予測しており、自然変動の影響を過小評価していたことが明らかになっている。

注目すべきは、ロシアのINM-CMモデル(Institute of Numerical Mathematics, Russia)だけが実測値と近似的に一致した点だ。同モデルは水蒸気フィードバックの効果を抑え気味に設定しており、他の欧米モデルより控えめな気温上昇を予測していた。