第二次安倍内閣の下村博文文科相のもとで、「世界基督教統一神霊教会」から「世界平和統一家庭連合」に名称変更が認められたことについて、不祥事で更迭された前川喜平元文部事務次官は、「政治的な力が働いていたとしか考えられない」という。

前川は97年に文化庁宗務課長として、統一教会から法人名を改称したいという相談を受けたが、名称変更による疑惑隠しとみられることを嫌い、とりあえず申請を提出しないようにと指導しただけで、文化庁で変更申請があったのに拒否していたのではない。

また、この改称は韓国でも行っているので、日本での悪い印象を隠すことだけが動機とは言い切れないし、届け出事項なので、拒否して裁判に訴えられると厄介とみられており、教団から申請が出た以上は、事務方が上げてきたものを止めなかったから特別の判断を下村文科相が出したとはしたとは言い難い。せいぜい、下村文科相ならあえて止めないだろうと見たかどうかという程度だ。

そもそも、前川氏は中曽根弘文元文科相夫人の兄であることを忘れてはいけない。弘文氏の父である中曽根康弘元首相は、統一教会の支持を受けていた。2004年の「救国救世全国総決起大会」を開催したときには基調講演までしたほどである。

また、弘文氏の息子(康弘氏の孫)で、前川氏にとっては甥にあたる康隆氏が、21年の総選挙で旧統一教会の直接的支援を受けている。この中曽根家あげての半世紀にわたる旧統一教会との密接なつながりに対して、どうして諫言してこなかったのか不思議だ。

中曽根派の重鎮与謝野馨の文部大臣秘書官や文化庁の担当課長までしているのだから、専門家として危険だと中曽根家にいえる立場だった。そもそも、彼が統一教会のことをそれほど問題だと思っていたのだろうか。自民党政権に面従腹背だったといって過去の言動を説明しているが、野党陣営に与することになったのでそういっているだけだろうという同省関係者もいる。