しかし、政治資金規正法には、寄附の質的、量的制限など、一部に「禁止」の規定もある。政治資金規正法21条の2は、【前掲拙稿】でも述べたように、1994年の政治改革4法の成立に伴う政治資金規正法の改正で、保有金制度と、政治家個人についての収支報告書の廃止に伴って、極めて低い法定刑で導入された、もともとの「生い立ち」に特異性がある規定であり、その「禁止」の適用対象をどうするのかを、「公開」に関する規定と同様に考えることはできない。

そのような商品券問題の背景となった政治資金規正法の構造の問題も含めて検討を行わなければ、石破首相の商品券問題についての適切な判断も行えないのである。

野党側は、石破首相の政治倫理審査会への出席を求めているが、仮に、政倫審に出席したとしても、石破首相は、従来どおり、10万円の商品券の贈与が世の中の常識からかけ離れていたことについての謝罪を続け、それが政治活動に当たるかどうかについては、「限定説」に立って、「違法ではない」とする主張を述べ続けるだけである。国会の場でそのような議論を続けることにどのような意味があるのか疑問だ。

むしろ、この商品券問題で「違法の指摘」の根拠となっている政治資金規正法21条の2の規定が制定された経緯、「政治資金パーティー裏金問題」を含めて、検察が全く適用しようとせず、機能してこなかったこと、そのために、政治家間の不透明な金銭等のやり取りが事実上野放しになってきたことに目を向け、政治資金規正法の改正にも関連づけた国会論議を行うべきであろう。