今回のM&Aにより、西友は改善に向かう可能性が高い。両社の相性が良いからだ。関東圏が手薄なトライアルと関東圏が強い西友は、立地面でカニバリズム(同企業内競合)を起こさない。ウォルマート傘下時代の安い西友を望む顧客と、「和製ウォルマート」と呼ばれるトライアルとは親和性が高い。ともに24時間営業であることも奏功するだろう。

今後の展開でもシナジー効果が期待できる。トライアルは、「トライアルGO」の首都圏展開を計画している。トライアルGOとは、40~300坪の小型トライアルだ。トライアルを「母店」(倉庫)とし、その母店から生鮮食品・スイーツ・総菜などを供給している。今後は、西友を「母店」とするトライアルGOを首都圏で展開していくという。

これは、西友の大久保社長がネットスーパーで採用していた手法でもある。

「当社のネットスーパーのような店舗型なら店舗の資産を有効活用できます。店舗に商品が並んでいて、在庫がある。ピッキングしやすく陳列されている。すごい資産ですよ。バックヤードのスペースは空いていて、出荷スペースも余裕がある。生産設備もあり総菜もつくっている。鮮度の良い商品を届けるために資産を有効活用できる。設備投資がほとんどかからず売り上げがかなり伸びますから、投資効率が高い事業です」

西友・大久保社長 データ分析で特売減らし、安売り脱却|日経ビジネス(2024年8月9日)

この潤沢な西友資産の継承は、トライアルGOの出店を後押しするはずだ。

地に足が付いた経営

一方、懸念もある。その1つが、プライベートブランド「みなさまのお墨付き」への過度な期待だ。1月の記事に書いた通り、西友のプライベートブランドのコスパは決して良くはない。

イオン?ドンキ?トライアル?:誰が西友を買うべきか
近隣に西友ができて40年が経つ。 「無印良品があるのが羨ましい」。デザイナーの知人に言われたのは、西友がセゾン傘下だった頃。 「安いものが一箇所で買えるのが羨ましい」。関西の友人に言われたのは、西友がウォルマート傘下だった頃。 ...