調査委員会は、本事例の死因を、ワクチン接種によってアナフィラキシーを発症し、非心原性肺水腫を併発したことによると結論付けている。この事例は、剖検も行われておらず、報告医はワクチンとの因果関係は評価不能と判定している。

ところが、厚生科学審議会副反応検討部会では、診断も確定せず、剖検もされていないのにもかかわらず、総合的判断で、ワクチン接種と死亡との因果関係は否定できないとして判定(α判定)を下している。

筆者は、国会議員が開くワクチン副反応の勉強会で、厚労省の担当官と同席したことから、この事例がα判定を受けた理由を尋ねることができた。その質問に対して担当官は、接種から死亡までが短時間であることを理由にあげた。

今回の検討でも、接種当日に死亡した事例が7人含まれている。接種から死亡までが短時間であることがα判定とする理由であるのなら、今回の7人がα判定されない理由はどこにあるのだろうか。

今回の検討では、PMDAに報告されていない接種後死亡例の臨床情報がないので、副反応疑い報告制度に登録される事例が、報告されていない事例と比較してどのような特徴があるかを明らかにすることはできなかった。

副反応疑い報告制度の目的は、死因とワクチン接種との因果関係を明らかにすることではなく、ワクチン接種に関わる安全性シグナルを検出すことにある。その意味で、ワクチン接種後の死亡事例の報告率が1%にも達せず、とりわけ、2023年以降の報告率が激減していることは大きな問題である。

副反応検討部会は、これまで一貫して、コロナワクチンの安全性については重大な懸念はないと報告しているが、これほど報告数が激減した状況で安全性の評価は可能だろうか。早急に、2023年以降に、報告数が激減した理由を明らかにするべきである。