その根拠を示して稿を結ぶ。笹川平和財団(「SPF」)の中東調査会主任研究員高橋雅英氏は、25年2月25日配信の「中国のクリーンエネルギー政策――トランプ政権が“パリ協定”から離脱しても推進する理由」と題する論考の中で、中国が「重要鉱物を確保する狙い」について、「中国のグリーンビジネスを支える重要鉱物」という一項を設けて考察している。
即ち、中国の最大の強みはクリーンエネルギー製品に不可欠な重要鉱物の世界的なシェアを握っていることだ。中国にはリチウムイオン電池に欠かせないリチウムとグラファイトが豊富にあり、リチウム生産量(24年)は、オーストラリアやチリに次ぐ第3位(総生産量の17%)、埋蔵量は300万トン(全体の10%)と推定され、またグラファイトは生産量・埋蔵量ともに世界最大(総生産量79%、総埋蔵量28%)だという。
コバルト・ニッケル・銅は、中国での生産量が少ないか採掘されていない。が、中国企業は世界各地の鉱物権益を囲い込んでおり、コバルトとニッケルではそれぞれ最大生産国のコンゴ民主共和国とインドネシアに、銅事業では主要生産国のコンゴ民主共和国・ザンビア・チリにそれぞれ投資し、権益を獲得して来、自国への販路網を構築することで、重要鉱物の国際的な供給網を占有しているそうである。
加えて中国は、鉱物確保の取り組みに重要鉱物の精錬・加工技術を兼ね合わせることでサプライチェーンを更に強化している。23年の世界の鉱物精錬・加工量に占める中国のシェアは、グラファイト91%、コバルト77%、リチウム65%、銅44%、ニッケル28%とのことだ。24年12月に米国による対中半導体輸出規制の強化への対抗措置として、電子部品の製造に必要なガリウム・ゲルマニウム・アンチモンなどの米国輸出を原則禁止した例も挙げている。
「SPF」の論考は「中国のクリーンエネルギー政策」に絞ったものだが、中国はレアアース・レアメタル全般について同様の囲い込みを行っていると考えるべきだろう。それを前提とすれば、トランプのウクライナ(やデンマーク)に対する「とんでもない要求」も、米国にとっては(西側諸国にとっても)当たり前なのではなかろうか。