大統領はまた、いずれにせよ米国による支援は決定的だと述べた。同時に同氏は、ロシア・ウクライナ戦争は実際には世界中の安全保障の問題なのに、残念ながら、米国の国内問題となってしまったと指摘した。

大統領は、凍結されているロシアの資産のウクライナへの譲渡可能性についてもコメントし、「英国は、ウクライナに凍結資産を全てあげようではないかという。数千億ドルだ。素晴らしい、彼らに感謝している。しかし、それが単なる公のシグナルでしかないということのないよう実行しようではないか…。EUレベルで決定し、彼らはそれを採択せねばならない。今のところ、シグナル以外は何もない。しかし、武器は今必要なのだ」と述べた。

そこでトランプ側が求めているスキームだが、伝えられているところに拠れば、ウクライナの資源から得られた利益を別途設ける「基金」にプールし、半分を米国のものとし、一部をウクライナの復興に充てるとされる。対象資源はレアアースだけでなく石油・ガスも含まれるとされ、この仕組みにより、ウクライナは米国が供与した5000億ドルを返済せよという訳である。

これについて服部教授は次のように述べるが、ゼレンスキーは前述の様に述べているし、両大統領の会見はまだなので、現段階では少々トランプに厳し過ぎる表現のように感じられる。

これに対し、ゼレンスキー大統領は米国による支援は1000億ドル程度だったと主張している。そもそも、バイデン前政権が贈与として実施してきた支援を、事後的に負債と見なし、対価を求めること自体、どうかしている。しかも、トランプ政権側の立場によれば、これはあくまでも過去の支援に対する見返りであり、今後のウクライナの安全保障にコミットするつもりはないということである(その役割は欧州に押し付けようとしている)。この点で、ウクライナ側の立場と根本的に相容れない。

が、同教授のこの地域の専門家らしい諸分析はためになる。即ち、23年版『フォーブス』誌のウクライナの地下資源埋蔵額14.8兆ドルのうち、ドネツク州3.8兆ドル、ドニプロペトロウシク州3.5兆ドル、ルハンシク州3.2兆ドルとの記事を引き、24年末時点で、ルハンシク州の99.3%、ドネツク州の70%がロシアに占領されており(ドニプロペトロウシク州も前線から近い)、埋蔵量豊富とされるドンバスのシェールガス・オイルや、クリミア沖の石油・ガス田なども魅力だが、ウクライナがこの地域を奪還することが前提になる、とする辺りである。