この論文の主な発見は次の通りです。
第1に、国際関係論(IR)と政治学の部分的な分離が生じているということです。政治学の「ビッグ3学術誌」(APSR:American Political Science Review, AJPS:American Journal of Political Science, JOP:Journal of Politics)の内、国際関係論でトップ3に入るのはAPSRのみであり、IO:International Organizationが突出して1位、IS:International Securityが3位に位置づけられています。
第2に、「仮説・検証」の計量分析の論文は、出版されている本数に比べるとシラバスでの採用数が低いことも分かりました。必読文献のトップはケネス・ウォルツ著『国際政治の理論(Theory of International Politics)』(勁草書房、2010年〔原書1979年〕)であり、2位はジェームズ・フィアロン氏(スタンフォード大学)の画期的な論文”Rationalist Explanations for War”(International Organization, Vol. 49, No. 3, 1995, pp. 379–414)の師弟コンビによる研究です。
前者については、拙ブログ記事「K. ウォルツ『国際政治の理論』と日本の国際政治学」、後者については「戦争のバーゲニング理論再考」で解説していますので、よかったらお読みください。
フィアロン氏の論文には、私の知る限り、邦訳がありませんので、原文を読むしかないようです。なお、かれの理論を構成する2つの中核概念である「コミットメント問題(commitment problem)」と「私的情報(private information)」と戦争の関係については、クリストファー・ブラットマン氏(シカゴ大学)が『戦争と交渉の経済学―人はなぜ戦うのか―』(草思社、2023年)で豊富な事例を使いながら、丁寧に解説していますので、興味のある方は、ぜひとも、ご一読することをおススメします。