だが、果たしてこれは政策論として何を意味しているのか。
親身になるのだから、巨額の支援をする、ということがメッセージの内容だと、感覚的に受け止められている。そのため最近では「その通りなのでお金を沢山渡していい」という反応と、「それにしてもお金を渡しすぎだ」という二つの情緒的な反応を引き出すだけになってきている。
岸田首相のXでは、次のような言葉が添えられている。
ウクライナに一日も早く平和をもたらさなければなりません。
そしてその平和は、国連憲章を含む国際法の諸原則に基づく、「公正かつ永続的な平和」でなくてはならず、力や威圧による一方的な現状変更の試みを正当化するようなものであってはなりません。
これは現実を認められない、という現状認識の表明としては、わかる。だが果たしてどれくらいの国民が、このメッセージを具体的な目標を持った具体的な政策の説明として理解することができるだろうか。
ロシアの全面侵攻開始直後であれば、現実を認めないために、現実に抵抗しているウクライナを支援する、という日本政府の態度の表明として、理解できた。だがその時からすでに2年半の時間が経過した。最初の立ち位置の説明を繰り返すにしては、長すぎる時間だ。
ウクライナを支援するのが日本の立場であることは、わかった。だが2024年10月の現実を見ながら、いったい何を目標に定めて、どれくらいの資源を投入してその目標を達成するという見込みなのかは、全く不明である。
もし仮に「ウクライナが、ロシアを軍事力をもって完全に駆逐し、軍事力をもって領土を全て奪還し、軍事力をもって再侵攻を防ぐ抑止を働き続けさせられるように、たとえ何十年、何百年、何十兆円、何百兆円かかっても、果てしなく戦争継続のための支援を続ける」とSNSに書いてあったら、当然、国民の反応はよりいっそう硬化するだろう。だが果たして岸田首相は、違うことを言っているのだろうか。