日本の国会が解散して、衆議院選挙戦が始まる。折しも中国軍が台湾を取り囲む軍事演習を行った。台湾海峡をめぐる危機の発生は、数年単位の時間の問題だ、と考える研究者も多い。日本はどう対応するのか。
石破首相は抑止力を高めるための安全保障政策の充実に関心があるようだ。だが、聞こえてくるのは、「アジア版NATO」のような実現性が乏しい抽象論にとどまっている。これについては元防衛大臣の小野寺五典自民党政調会長が検討して取りまとめることになったという。
ただ石破首相の様子は、曖昧模糊としている。自説が批判にさらされてひるんだが、まだ未練は残っている、といった具合だ。とりまとめの先行きは不透明と言わざるを得ない。また現在、外務大臣も防衛大臣も元防衛大臣だ。自民党主導の議論が、どのように両省と歩調をとって進んでいくのかも、見えてこない。
岸田前政権では防衛費の倍増という派手な政策が導入された。しかし倍増して何をするのか、それでどんな結果を期待する(責任を取る)のか、という肝心の点は、実際には、議論が忌避されているのが実情だ。
そんな中、選挙戦の文脈もあるのだろう。SNSで岸田首相が「今日のウクライナは明日の東アジアかもしれない」というメッセージを出した。もちろん過去2年半の間に繰り返し見たメッセージである。
ウクライナに一日も早く平和をもたらさなければなりません。
そしてその平和は、国連憲章を含む国際法の諸原則に基づく、「公正かつ永続的な平和」でなくてはならず、力や威圧による一方的な現状変更の試みを正当化するようなものであってはなりません。 pic.twitter.com/dbi5DjxLpB— 岸田文雄 (@kishida230) October 14, 2024
あまりに見慣れてきたため、感覚的にだけ捉えることが簡単にできるようになった。ウクライナを他人事とみなさず、親身になってみていこう、というメッセージである。ウクライナの苦境を考えれば、否定しがたい情緒的なメッセージだ。