ガザなどで多くの民間人が犠牲になっている事実を見れば、イスラエルやそれを支持する米国を非難するのは容易です。

メディアを含め、多くの日本人がその立場を取ることも理解できます。しかし、ハマスが民間人を「人間の盾」にしている事実や、国際政治の現実における冷酷な力学を見据える必要があります。

細部や各論は違う。しかし日本は、この冷徹な国際政治の現実を巧みに利用してきました。

戦後、日本は米国の圧倒的な軍事力に安全保障のほぼすべてを依存し、その結果として経済や技術の発展を遂げました。冷戦期、米国は共産主義と戦うために多くの犠牲を払いましたが、日本はその米国が置かれた状況を賢く利用し、さらに民主主義陣営の仲間、同盟国日本に市場開放した米国を利用、世界有数の経済大国となったのです。家族まで犠牲にするくらいの努力、世界に誇れる日本人の優秀な面もあります。だが日本と同じような保護主義の欧州と違って米国は90年代初めくらいまで、かなりの程度の市場開放を、日本にしてきました。冷戦時代の米国が置かれた環境、日本は漁夫の利を得て、世界有数の経済大国になったのです。

日米安全保障条約は、米国に日本防衛の義務を負わせる片務的な条約であり、日本は自国の軍隊が米国有事でも、米国のために血を流さずに済むという恩恵を享受しています。上記の「漁夫の利」の一例が、基地提供と共に存在するここの部分です。

この条約の背景には、米国の強大な軍事力と共に「核の傘」が大きく関わっており、これが敗戦後70数年享受してきた日本の平和と安全の大きな要因の一つです。しかし、この現実を日本国民の多くは理解しない状況が、いまでも続いています。日本政府も強調しなかった。だが非常に賢く、表向きには「核廃絶」に向けた努力を、唯一の被ばく国である日本の国民にアピールしてきました。

実際、オバマ政権が核兵器の威嚇力を減らそうとした際、日本政府は米議会や関係者に働きかけ、日本の防衛力が損なわれるとしてその動きを止めることに成功しました。この事実を知る日本国民は少なく、多くの日本国民は日本政府が本気で核廃絶に取り組んでいると信じ込んでいます。