さらに、第二次世界大戦中にナチスによって行われたユダヤ人に対する蛮行の記憶がアメリカに深く根付いています。歴史的な贖罪の感情がアメリカ国内でのイスラエル支持を後押ししており、これもまた米国がイスラエルに対する基本的な支持感を維持する大きな要因となっています。
ここで非常に重要な点をひとつ強調しておきます。繰り返しになりますが、基本的にアメリカはイスラエルを支持しており、この姿勢は今後も変わることはないでしょう。しかし、バイデン政権によるネタニヤフ首相個人への批判は非常に強いものがあります。過去数千年まで遡れる双方の言い分の正統性。そこの歴史的な経緯を除く、今回の惨劇の切っ掛けになった10月7日のハマスによるテロ攻撃「事件前」、バイデンはネタニヤフに対して冷ややかな態度を示していました。
予想されたガザへの1万倍返しの報復が始まる前、バイデン政権はイスラエルの自衛と「テロとの戦い」に関する国防作戦の正当性には理解を示していましたが、その一方で、軍事行動を制限する条件も提示してブレーキをかけるために努力を惜しまなかった。
この背景には、ネタニヤフが個人的な問題を抱えていることも影響しており、そのために今回の戦争拡大を止めることが難しい状況にあるのです。この点が、バイデン政権にとって、イスラエル支援に関する重要なマイナスの判断要因となっています。
今回のイスラエルの異常ともいえる報復には、ネタニヤフの個人的な要素がかなりの程度あり、これまでのイスラエルとは違う側面が垣間見えます。
総論として、アメリカがイスラエルの行動を完全に止めることは現実的に難しく、むしろ黙認や支援に回る可能性が高いと言えます。
日本の人々にとって、このような現実は理解しにくく、驚きを伴うかもしれません。しかし、これが国際政治の冷厳な現実であり、複雑な力学を理解するためには避けて通れない問題なのです。単に民間人が多数死んでいる、人質の命が風前の灯、さらにたくさんの国際法違反なので、すぐに停戦しろという声が、ネタニヤフを中心としたイスラエルに届かない理由なのです。