ビジネス
2024/10/09
古代史サイエンス:7000年前の朝鮮半島古代人は縄文人なのか? --- 金澤 正由樹
朝鮮半島古代人のDNAは縄文人と同じだった
こうなると、出現した朝鮮半島古代人はどのようなDNAを持っていたのかが知りたくなります。これに関しては、既にいくつかの研究が公開されており、それらをまとめた結果が、2021年のNatureに論文として掲載されています。
図4は、この論文に掲載された主成分分析によるゲノム解析の結果で、物理的な距離が近いほどDNAが似ていることを示しています。見たとおり、朝鮮半島南部古代人(十字の星形)は、すべて赤点線内にあり、現代韓国人(黄色)よりは、現代日本人・現代沖縄人(灰色)や縄文人・弥生人(五角形)に似ているケースが大半であることが分かります。
なお、分析の対象となった人骨が出土した場所は次のとおりです(図5)。
以上のことを整理すると、
- 約2万年前に氷河期が終了し、それまでの朝鮮半島の住民は北に移動したため、約7000年前までほぼ無人となった
- その後の朝鮮半島では、約7000年前から人口が急増したが、場所はすべて日本寄りの海岸だった
- 出土した人骨を分析したところ、朝鮮半島古代人の多くは縄文人とほぼ同じDNAを持っていた
となります。
よって、素直に考えると、約7000年前に縄文人が海を渡り、当時無人だった朝鮮半島に上陸し、そのまま定住したという結論が得られます。とはいうものの、相当に意外と感じる人が大部分でしょう。
では、なぜ縄文人は約7000年前に海を渡ったのか。
実は、2年前の記事「現代日本人は縄文人の直系の子孫なのか?」でも紹介したとおり、約7300年前には、薩摩半島南方に位置する鬼界カルデラで、過去1万年では世界最大級となる破局的大噴火が発生しています。
大噴火による火砕流と大量に降り積もった火山灰により、南部九州の縄文人は壊滅。植生が回復するまでには数百年が必要でした。かろうじて大災害を生き残った北部九州の縄文人は、朝鮮半島南部にまで避難して移住したということが、最も可能性が高いシナリオとなります。
関連タグ