しかしゼレンスキー大統領の確信は、容易には変わらないだろう。そもそも「ウクライナは勝たなければならない」の呪縛でがんじがらめになっている状態では、たとえ合理性がない無謀な作戦であってでも、「勝利」の夢を見ることができる作戦であるならば、試してみるしかない。ゼレンスキー大統領の悲壮感あふれる発言からは、そのような破綻した決意すら読み取れる。
ここで奇妙なのは、日本の軍事専門家である。これまで数多くの軍事評論家の方々が、「ウクライナは勝たなければならない」キャンペーンに参加して、日本の世論を誘導することにも、大きな役割を果たしてきた。
ところが今回のゼレンスキー大統領の「勝利計画」を取り上げて、「交渉に本気になってきた」などと、ゼレンスキー大統領が全く言っていない内容を、解説し始めている。
[深層NEWS]ゼレンスキー氏の「勝利計画」に小原凡司氏「交渉に本気になってきた」
【読売新聞】 笹川平和財団の小原凡司・上席フェローと東大先端科学技術研究センターの小泉悠・准教授、明海大の小谷哲男教授が24日、BS日テレの「深層NEWS」に出演し、ウクライナのゼレンスキー大統領の訪米について議論した。 ゼレンスキ
ゼレンスキー大統領は、「勝利計画にロシアとの協議は含まれない」と明言しているのに、日本の軍事評論家が、ゼレンスキー大統領の発言を真っ向から否定して、ゼレンスキー大統領の「勝利計画」は、ウクライナが「交渉に本気になってきた」ことを示している、などと解説しているのである。
ゼレンシキー宇大統領、「勝利計画」にロシアとの協議は含まれないと指摘
ウクライナのゼレンシキー大統領は、米国訪問時にバイデン米大統領に提示する予定のウクライナの「勝利計画」につき、それにはロシアとの協議の記述はないと説明した。 — ウクルインフォルム.
ゼレンスキー大統領は、「勝利計画」の必須の一部に、ウクライナ憲法も規定しているNATO加盟への前進を、含みこませている。ところが日本の軍事評論家が、ゼレンスキー大統領の発言を真っ向から否定して、ゼレンスキー大統領の「勝利計画」は、ウクライナが「主権を守り切る」ことなので、その代わりに「NATO加盟は諦める」ことを解説していたりする。