高齢化対応への視点抜きでは、農業法人の経営基盤強化、サービス事業体の育成、スマート技術、デジタル機器の開発、農福連携などは進まない。
同様な「後継者問題」は、20世紀末まで全国の地方都市の商店街を構成していた本屋、肉屋、魚屋、八百屋、薬屋、小売店、バス営業所、バス停、タクシー会社、食堂、喫茶店、ガソリンスタンドなどもまた、「後継者不足」が顕在化したと同様に、近接する大資本が経営する総合スーパーマーケットとの競争で次々と店じまいを余儀なくさせられてきた。
「人口年齢構造の推移」がもたらした結果
いずれも図2のような「人口年齢構造の推移」がもたらした結果によるので、都道府県や市区町村だけの課題ではない。この対応こそ何よりも政府が核となって日本社会全体が取り組む「必要がある」性質のものである。
課題アンケート結果に「日本社会の歪み」が集約されている
出生数が大幅に落ち込み、やがて「年少人口」だけではなく、「生産年齢人口」も減少に転じるようになる。しかも団塊世代を軸とした高齢者の比率は、しばらくの間は30%前半を保つという予想がある。
この未曽有の人口変動に対処できなかった日本社会の歪みが、「地方創生10年間」での課題アンケート結果にみごとに反映されている。
4. 地方創生における社会学の視点
「多様性のある共生社会」は目標なのか?
確かに『総括文書』本文では「多様性のある共生社会」(:7)が使われていて、「福祉国家」という表現は見当たらない。むしろ繰り返される「デジタル田園都市国家構想」が鮮明ではないために、国家目標も絞り込めない。
かりに「概要」や「本文」で強調された「国民一人ひとりの多様な幸せ(well-being)」の積み上げが「多様性のある共生社会」と主張するのであれば、それは間違いである。