図4は、コミュニティの方向性としてディレクション(D)と住民の力のレベル(L)を接合して、資源(R)としてのリーダーシップと社会資源を新しく加えた理論化の試みである。
社会的な価値がある目標を達成する手段となるものはすべて社会資源とみなすので、ここでは天然資源だけではなく、地理的資源、産業的資源、歴史的資源、人的資源なども文脈に応じて社会資源として使う。
コミュニティDLR理論は、日本地域社会研究の原点をなす柳田國男と宮本常一の研究を出発点として、歴史的には全国総合開発計画、一村一品運動、内発的発展論、地域活性化論、そして比較コミュニティ研究などの膨大な内外の実証的な地域研究文献との接合により生み出された。
事例紹介を越える試みを続ける
10年間の地方創生論では、〇▼地区では有機農産物に特化して、それが大都市消費者に好評であり、売り上げが増加したといった事例の紹介が目立ったことである。
その意義は承知しているが、事例紹介を越えて可能な限り汎用性を求めてみたい。そうしなければ、活用資源が異なると、新しい地区では全くのゼロからの出発をせざるを得ないからである。
その観点から私(金子)は「コミュニティのDLR理論」をまとめてみたのである。
5. 地方創生における経済学の視点
「まち、しごと」
10年間の総括文書へのコメント、および「ひと、まち」を包摂する社会学の視点は以上の通りである。それを受けて、「まち、しごと」に関連する経済学の視点からまとめておこう。
長期停滞に陥った日本経済の回復に必要なものは内需である。しかし、地方の衰退はこの内需を減少させる。
内需停滞の原因は二つある。一つはフローの所得の伸び悩みである。これは、賃金統計をみれば明らかだが,地方の賃金が特に伸びていない。現在の賃金上昇は主に製造業大手とサービス産業で生じているが、地方ではその比率が低いのである。