「多様な幸せ(well-being)」は主観指標なのだから、それを合成しても国家目標にはなりえない。なぜなら、主観指標は他者との比較の結果得られるものなので、回答者の比較素材が変化する状況での調査結果を時系列に並べた積み上げが「多様性のある共生社会」にはならないからである。
むしろ、「多様性の賛美が、かえって格差を温存している」(佐藤、2023:124)という危険性もある。
「部門別社会保障給付費」の推移をどう受け止めるか?
図3「部門別社会保障給付費」の推移をどう受け止めて、限られた予算と国民負担のなかでどのように対応するかによって、国としての地方創生戦略も始まるであろう。
「部門別社会保障給付費」の動きに左右される「地方創生」
第一には「社会保障給付費」の推移のうち、高齢者「年金」は確実に頭打ちの状態になり、全国民に該当する「医療」と「福祉その他」の伸びが著しくなっている。
この3部門の趨勢を容認するのか変えるのかが、新政権ではまず問われる内政の課題になる。すなわち年金受給の年齢にある高齢者3625万人(2024年9月15日時点)が、この「頭打ちの年金」にどのような反応を示すかによって、高齢化政策にも変更点が生じる。
同時に全国民に関連する「医療費」の増大への対処を考えざるを得なくなる。さらに、「福祉その他」における介護費や家族手当それに生活保護などの伸びへの対応も大きな課題となる。
そして「地方創生」もまた、「部門別社会保障給付費」の動きの延長線上で、力点移動の可能性を帯びている。
コミュニティのDLR理論の提唱
私(金子)は「一事なれば、万事なる」という経験から、地方創生論のよりいっそうの広がりを求めて、この10年間はコミュニティのディレクション(D)とレベル(L)に社会資源(R)を加え、DLR理論としてのコミュニティ論の総合化をめざしてきた(金子、2016)。