しかしこのようなウクライナ側の態度は、基本的な事実を見逃している。それはロシア側から見ると、東部四州はすでにロシア領になっている、という点である。特に2014年以降のドンバス戦争の係争地になっている地域は、プーチン大統領にとってはウクライナに対する外交政策の基盤を説明する住民保護地域である。この地域の住民を放置して、クルスク州の住民保護だけに部隊を差し向けるといった事態は、決して起こりそうにない。
確かに、ロシアの侵略行為は、国際法違反だと言える。国連総会決議も出ている。ロシア占領地域は、占領地域であって、ロシア領ではない。しかし、それはロシアでは採用されていない論理であり、プーチン大統領の行動を予測するには十分な情報ではない。プーチン大統領の行動を予測するためには、プーチン大統領の思考に内在した論理を分析しなければならない。
プーチン大統領が侵略をしているのは、プーチン大統領が邪悪だからで、それ以外に理由はない、という論理だけを信じるだけでなく、それ以外の情報を閲覧禁止するようになると、どうなるか。やがて次のように推論するようになる。
プーチン自身も、「俺が侵略しているのは、俺が邪悪だからだ、俺が占領した地域は全部ウクライナ領だと知っているが、俺が邪悪であるために力を振り回して邪悪な行為をして侵略して占領しただけなのだ」と、考えているに違いない、と想像してしまう。
そこでロシア領に少しウクライナ軍が侵入しただけで、「おお、邪悪だから好き勝手していたが、自国民が襲われるのであれば、そちらを優先させなければ!」とプーチン大統領が考えてくれるのではないかと想像してしまう。
「クルクス反攻で苦境に陥ったプーチン大統領」という題名の別の論考を見てみよう。
クルクス反攻で苦境に陥ったプーチン大統領(東洋経済オンライン) - Yahoo!ニュース
2024年9月は後年振り返れば、ウクライナ侵攻の行方に大きな影響を与えた節目の1カ月だったと記憶されることだろう。まず前半は、軍事的な転換点となる「事件」が相次いだ。そしてこれらの「事件」を踏まえ