ウクライナは、NATOのさらなる関与を引き出すことを目標にして、軍事的には合理性の欠けた、エスカレーションそれ自体を目的にした作戦を繰り返す。NATOのさらなる深い関与以外には、「勝たなければならない」目標を達成できないからだ。
ところが驚くべきことに、NATO諸国は、実際には、直接介入などしたくない。そのための準備も全くしていない。このミスマッチを、ロシアは突いてくる。ロシアは前進できる限り、前進してくる。
ミアシャイマー教授は、この構図を見透かしている。そのためウクライナが、エスカレーションそれ自体を目標にした作戦を繰り返す行動の効果を、見限っている。
私は『フォーサイト』という会員制のオンライン・サイトで、国際問題に関心を持つ層向けの時事問題を論じる文章を定期的に書いている。そこでミアシャイマー教授について、2022年の全面侵攻のすぐ後に、幾つか書かせていただいた。
ミアシャイマー「攻撃的リアリズム」の読み方――ウクライナ侵攻「代理戦争論」「陰謀論」の根本的誤り(上):篠田英朗 | 「平和構築」最前線を考える | 新潮社 Foresight(フォーサイト) | 会員制国際情報サイト
ウクライナ「代理戦争」論者、陰謀論者が俄かに引き合いに出す政治学者ミアシャイマーだが、多くの場合その攻撃的リアリズム理論は誤用されている。ミアシャイマーはアメリカ外交がウクライナに「緩衝地帯」以上の地位を与えたことを批判しており、「アメリカがウクライナをけしかけて戦争させた」などとは述べていない。 (後編はこちらのリン...
ミアシャイマー「攻撃的リアリズム」の読み方――ウクライナ侵攻「代理戦争論」「陰謀論」の根本的誤り(下):篠田英朗 | 「平和構築」最前線を考える | 新潮社 Foresight(フォーサイト) | 会員制国際情報サイト
ミアシャイマーの思考の中心には、中国封じ込めを目的とするアメリカ主導のバランシング同盟形成があり、そこにロシアも参加させる発想がある。ゆえにミアシャイマーからすれば、2014年マイダン革命以降のウクライナをめぐる米露間の緊張は、欧州の事情でロシアとの間に火種を持つという構造的レベルでの誤りを意味しただろう。 (前編はこ...