同じ和歌山県内にオオカワリギンチャクを展示している水族館があります。みなべ町から車で国道と県道を通った約30分の距離の白浜町にある「京都大学白浜水族館」です。

こちらの水族館では、多くのオオカワリギンチャクを展示しています。

光るイソギンチャク『オオカワリギンチャク』 水族館の飼育担当者に生態を聞いてみたオオカワリギンチャク(提供:京都大学白浜水族館より提供)

担当飼育員さんならオオカワリギンチャクについて何か知っているかもしれないと思い、お話をお伺いすることができました。

展示の個体は繁殖したものか?

──みなべで保護をされている一方で、京都大学白浜水族館で展示されているオオカワリギンチャクの個体数は数十個体。これは繁殖をして増えた個体なのでしょうか。

担当飼育員Aさん「水槽内で繁殖したことは、今のところありません。なお、当館ではイセエビの刺し網に偶然かかった個体を入手しており、年に数個体の補充があります。オオカワリギンチャクは比較的丈夫なため、少しの補充で展示には充分であるため、当館では特に繁殖の必要がなく、それゆえに繁殖についての知見はほとんどありません」

展示個体数が多い理由は、イセエビ漁の網にかかったオオカワリギンチャクを補充しているためということでした。

展示で気を付けていることは?

──少なくとも、オオカワリギンチャクは展示スペースでは元気に生き続けているということになります。餌は何を与えているのでしょうか。

担当飼育員Aさん「当館では数十個体のオオカワリギンチャクをまとめて飼育しています。餌をまとめて与える必要があるため、魚類養殖用の配合飼料とアミエビ・オキアミを混ぜて、ミキサーでペースト状にした餌を溶かして与えています」

──展示で気を付けていることはありますか。

担当飼育員Aさん「展示では温度管理に気を付けています。当館では海水を冷却し、通年15℃の水温で飼育しています。深い水深に生息する生き物ですので、高温に弱いです。昔、まだ冷却装置が導入される前は、夏になると弱って死んでいたという記録が残っています。先ほどの繁殖の話に繋がるのですが、たいていの生き物は水温変化によって季節の変化を感じ取ります。そして特定の時期に繁殖するのですが、当館では通年で水温を変化させていません。故にオオカワリギンチャクは繁殖をしないのかもしれません」