来年からAUSSOMに衣替えする機会に、UNSOMは活動終了になるが、UNSOSは引き続き物資面での側面支援を行い続ける。さらに昨年12月の国連安保理決議2719で、地域機構の国際平和活動に、国連分担金を通じた財政支援を、活動予算の75%を上限に、行うことができることが決められた。より具体的な決定は今年末までになされる予定だが、日本からの国連分担金も、AUSSOMに投入される可能性が高い、ということである。
このような長期に渡る重大な国際的な関与がなされてきたソマリア情勢をめぐって、エチオピアとエジプトというアフリカ有数の地域大国が対立を深めている現状に、周辺国・利害関心国は、懸念を深めている。ジブチは、エチオピアに自国内の新たな港湾施設の使用を呼び掛けた。紅海周辺地域への関与を深めるトルコが、調停に乗り出す、といった話も飛び交う。
欧州から中東にかけて、鮮明な対立の構図を作る欧米諸国とロシアは、突出した行動をとらないように注視ながらも、事態の推移を観察しているだろう。アメリカは、ソマリア連邦政府やATMISを支援して、アルシャバブ掃討作戦に加担している。エジプトは、イスラエル防衛に不可欠な友好国だ。かつてトランプ大統領の時代にGERDをめぐる対立の調停を試みたときから、アメリカはエジプト寄りだった。しかし地域大国であるエチオピアとの対立を不必要に深めたいわけではないだろう。
ロシアは、エジプトと親しいスーダン国軍に近づき、ポート・スーダンというスーダン沿岸部の町に軍港を建設しようとしている。安易に「アフリカの角」での対立の構図を助長したいわけではないだろう。しかし同時に、中国を含めて、いずれの域外の大国も、事態を収拾することができるほどの影響力を持っているわけではない。
こうした地域政治情勢の中で、「ATMIS」から「AUSSOM」に衣替えするAUの平和支援ミッションが、ソマリア連邦政府を支援して、アルシャバブを抑え込んで治安を維持していけるかどうかも焦点だ。