ソマリアは「アフリカの角」と呼ばれるアフリカ大陸がインド洋に突出した要衝に存在する。ただし、国力は貧弱で、人口1,200万人程度の世界最貧国の一つだ。

これに対してエチオピアは10倍近い約1億2,000万人の人口を擁する大国だ。年率5%以上の経済成長を続け、今ではアフリカで第5位につける経済力もつけている。ソマリアに部隊派遣している他の諸国のうち、ケニアとウガンダも、貢献度が高い。それにしても過去15年の間のエチオピアの関与は、決定的な重要性を持っていた。

しかしエチオピアは、遂に15年にわたるソマリアへの部隊派遣に終止符を打つ。現在の「ATMIS(African Transition Mission in Somalia)」の活動が終わる今年末までには撤退する。ただしATMISは、規模を縮小させたうえで、来年から「AUSSOM(AU Support and Stabilization Mission in Somalia)」に衣替えする予定である。それにあわせてエジプト軍が展開する。

日本ではAUのソマリアにおける活動がニュースになることは皆無と言っていいと思われるが、非常に重要なミッションである。ピーク時には2万人以上の要員を擁して、事実上「アフリカの角」の要衝における「対テロ戦争」の最前線を担っていただけではない。ミッションの性格が特異であったため、他の地域の国際平和活動の形態にも影響を与えてきた。

2007年にAMISOMが設立されたとき、実はアフリカ諸国は、早期の国連PKOへの移管を期待していた。しかしソマリアに悪夢の記憶を持つアメリカの難色などもあり、国連安全保障理事会が、ソマリアへの国連PKOの展開を了承しなかった。

その罪滅ぼしとして、UNSOMという政治調停にあたるミッションと、UNSOSというロジスティクス面でAUミッションを支援する活動を展開させて、国連は、側面支援を充実させた。アフリカ連合が主役で、国連が裏方の側面支援に徹する形で、世界で最も綺麗な「パートナーシップ国際平和活動」が行われているのが、ソマリアの事例である。