医師や研究者でもない武見厚労大臣は、専門家のアドバイスを受けて上記の発言をおこなったのであろう。わが国の超過死亡は、国立感染症研究所(感染研)からの数値が公式発表とされている。感染研の鈴木基センター長は、2021年4月に見られた超過死亡は、ワクチン接種回数の増加に先立って発生していることから、Bradford Hillの因果判定基準に照らし合わせて、超過死亡におけるワクチン接種の関与を否定している。

国会における政府答弁でも、長らく、超過死亡におけるワクチン接種の関与を否定する根拠として鈴木基センター長の発言が用いられてきた。わが国のワクチン接種が、ワクチン接種後の死亡リスクの高い高齢者施設の入居者が先行したことを考えれば、超過死亡の始まった時期とワクチン接種のピークとがずれていても何ら不思議ではない。

超過死亡の増加にワクチン接種の関与はあるか?

超過死亡の増加にワクチン接種の関与はあるか?
コロナの流行が始まって3年が経過したが、2020年には多くの国で超過死亡が見られたのに、わが国で観測された死亡数は予想される死亡数より少なく過少死亡を生じた。ところが2021年には、一転して、5万人に達する超過死亡が観測され、昨年は...

次に、感染研がおこなったことは、予測死亡数を嵩上げすることで、2023年以降は超過死亡が観察されなくなったという発表である。この発表が、実態を反映していないことは今回の検討でも明らかである。

激増していた超過死亡が一転して過少死亡になったのはなぜか?

激増していた超過死亡が一転して過少死亡になったのはなぜか?
これまで、新型コロナウイルスの感染者数は、全数把握された速報値が毎日メディアで報道されていたが、5類への移行後は、定点観測施設からの週1回の公表に変わった。一方、超過死亡については、協力に応じた全国の自治体からの死亡数の報告に基づき...