2020年の年齢調整をおこなったうえでの死亡数は、予測死亡数と比較して28,526人少なかった。ところが、2021年には25,815人の超過に転じ、2022年、2023年は117,444人、114,220人とさらに増加した。コロナ禍4年間における年齢調整超過死亡の総数は、228,953人と広島と長崎の原爆による犠牲者を合わせた数に匹敵する。
欧州連合(EU)やOECD統計局は、2020年から2023年の超過死亡数を、年齢調整を行わないで(粗死亡数)、コロナが流行する以前の2016年から2019年における粗死亡数の平均値との差で算出している。この算出方法は簡便で、各国間の超過死亡を比較するのに都合がよい。この方法で算出すると、日本のコロナ禍4年間の超過死亡の総数は60万人に達する(表1)。

表1 年齢調整超過死亡数と粗死亡数に基づく超過死亡数との比較
筆者作成
武見厚労大臣によると超過死亡の原因は高齢化によることは明白ということであるが、それでは、小児や若年成人には超過死亡は見られないのだろうか。
図3には、2010年から2023年における年代別の粗死亡率の推移を示す。0〜9歳の小児を除いて、2021年以降は、すべての年代で超過死亡が見られた。

図3 年代別粗死亡率の推移
宜保美紀氏作成
図4には、2020年から2023年における年代別の超過死亡率を示す。10歳代から50歳代の超過死亡率は、2020年から2023年にかけて漸増し、2023年が最も高かった。死亡数の絶対値が多いので、超過死亡数は高齢者の方が多いが、超過死亡率は、10歳代から30歳代の方が、60歳以上の高齢者よりも高かった。

図4 2020年から2023年における年代別超過死亡率
宜保美紀氏作成
超過死亡は、高齢者だけに見られるものではない。かえって、青少年や若年成人の方が高齢者と比較して超過死亡率は高い。とりわけ、コロナの流行が収束し、社会生活もコロナ流行前に戻りつつある2023年において、最も超過死亡率が高いことは注目に値する。