NISA(一般NISAとも言われる)は、つみたてNISAやiDeCo(個人型確定拠出年金)に比べて商品数が多い。それだけに銘柄選びが重要である。現在、NISAを利用する人が最も買い付けているのは投資信託だが、NISAで投資信託を選ぶことにデメリットはないのだろうか。
目次
1.NISAで一番買われているのは投資信託
2.NISAで投資信託を買う3つのメリット
3.NISAで投資信託を買う3つのデメリット
4.NISAで初心者が買うべき投資信託
5.証券会社選びの3つのポイント
6.おすすめ証券会社5社を徹底比較
7.おすすめ証券会社5社を徹底解説
8.NISAで初心者が買ってはいけない投資信託
9.NISAで初心者におすすめの投資信託5選
10.NISAで投資信託を運用するならデメリットに注意
1.一般NISAで一番買われているのは投資信託
「老後2000万円報告書」の効果があってか、NISAの人気が堅調だ。2019年12月末時点の一般NISA口座数は1,176 万 6,629 口座に増加し、買付額は18 兆 3,830 億円にのぼる(金融庁の『NISA・ジュニアNISA口座の利用状況調査(2019年12月末時点(速報値))』より)。
NISAはもともと健全な資産形成を支援するために作られており、初心者がイチから投資を始めるよりもハードルが低い。一般NISAは最長5年間、運用益が非課税という特典も大きい。
一般NISAで取引できる商品は株式投資信託、国内・海外上場株式、国内・海外ETF、ETN(上場投資証券)、国内・海外REIT、新株予約権付社債(ワラント債)と多岐にわたる。対象商品が182本のつみたてNISAや、運営管理機関が扱える商品数の上限を35本としたiDeCoと比較するとケタ違いに豊富だ。一般NISAは選択肢が多いとも言えるが、その分、銘柄選びは大変だとも言える。
一般NISAにおいて最も選ばれているのは、実は投資信託だ。金融庁の調べによると、2014年から2019 年9月末までの間に一般NISA口座で買い付けられた商品は、投資信託が9兆 8,804 億 4,427万円と全体の56.9%を占める。次いで多いのが上場株式で40.5%、ETFやREITはそれぞれ1%台にとどまる(金融庁の『NISA・ジュニアNISA口座の利用状況調査(2019年9月末時点)』より)。
つみたてNISAやiDeCoであれば、対象商品のほとんどが投資信託なのでこの結果は理解できるが、選択肢の広い一般NISAでも投資信託を選ぶ人が多いのはなぜだろうか。
2.NISAで投資信託を買う3つのメリット
NISAで投資信託を買うメリットを3つ挙げてみる。
⑴非課税枠をムダなく使える
一般NISAで投資信託を買うメリットは、年間120万円の投資枠を限度いっぱいまで買うのに適している点だ。株式を購入する場合は売買単位があるため、「あと50万円分」のように細かく金額を設定することはできない。一方、投資信託は大きくても1万円単位で購入できるため、一般NISAの非課税枠をムダなく消化することができる。
⑵少額で分散投資ができる
投資は地域や資産の種類など値動きの異なる複数の商品を保有することによってリスクを分散させるのが基本である。しかし、株式投資では1社の株式を購入するにはある程度まとまった資金が必要だ。
たとえばトヨタ自動車の株価は6,709円、売買単位は100株なので、1口買うにも約67万円が必要になる(2020年7月9日時点)。一般NISAの年間投資枠は120万円しかなく、1社の株式だけで半分以上を使ってしまうことになる。これでは分散投資は難しい。投資信託なら最低購入金額が1万円程度のものが多く、ネット証券では100円以上、1円単位といった超少額投資が可能だ。
⑶個人では投資しにくい地域やテーマに投資できる
たとえば世界のロボティクス関連全体に投資したいと考えた場合、国内外の該当企業を自分で探し出すのは至難の業である。投資信託はロボティクスやセキュリティ、環境関連やAIのような特定のテーマに特化した商品がいくつもある。成長が期待できる新興国を対象としたものも多く、幅広い投資が可能だ。
特殊なファンドは値動きや手数料に難がある場合もあるが、特定の分野に投資した商品をどうしても買いたいと考えている人にとって、投資信託は便利な仕組みなのだ。
3.NISAで投資信託を買う3つのデメリット
NISAで投資信託を買うことはメリットが多いが、デメリットもある。
⑴3つのコストがかかる
株取引では売買手数料が発生するが、投資信託は運用のプロに委託する形式となっているため、別途手数料が必要となる。投資信託にかかる費用は、購入時にかかる「販売買付手数料」、ファンドの管理費用である「信託報酬」、途中で換金する際に発生する「信託財産留保額」の3つである。
一般NISAの中には販売手数料4%超、信託報酬2%超のファンドも含まれており、これらを上回る運用益を得られない限り元本割れをしてしまう。
⑵NISAにはハイリスクな投資信託がまぎれている
税優遇という公的な介入があることから一般NISAは安全だと考えられているが、一概にそうとは言えない。
たとえば同じ税制優遇制度であるつみたてNISAやiDeCoは、安全面・コスト面で厳しい基準が設けられているので極端な商品は見当たらない。一方、一般NISAは証券会社で取り扱っている株式や投資信託の多くが対象になるため、ハイリスク・ハイリターン商品が含まれている。
たとえば指数の2倍や3倍程度の値動きを目指して運用するブル・ベア型投資信託やETF、成長性を重視した新興国の海外株式などだ。それも当たり前のように前面に押し出してくるので、初心者はそれが標準的な商品だと勘違いしがちだ。
⑶タイムリミットが5年しかない
投資信託の種類はさまざまで、長期投資に適したファンドから、株式よりも激しい値動きをするものまである。一般NISAではすべての範囲が対象だ。安定志向から長期投資に適したファンドを選んだとしても、一般NISAの非課税期間は5年と決められているため、それ以上だと運用益に課税されてしまう。せっかくのNISAの特典が台無しとなるのだ。
「ロールオーバー」をすることで一般NISAでの保有を継続できるが、その年の非課税枠を使ってしまうことになる。一般NISAでは5年以内に値上がりと売却ができそうな銘柄を選ぶことが勝負を左右するのだ。
4.一般NISAで初心者が買うべき3つの投資信託
一般NISAで投資信託を買うメリット・デメリットを踏まえ、投資初心者は一般NISAでどのような投資信託を買うべきなのか。
⑴インデックス型投資信託……手数料が安く不確実性が低い
一般NISAに限ったことではないが、投資においてはいかに多くのリターンを得るかということ以外に、「いかにコストを抑えるか」、「いかにリスクを避けるか」が運用成績を左右する。特に初心者にとっては手数料が安く不確実性の低い商品選びが重要になる。それを満たすのがインデックス型の投資信託だ。販売手数料がゼロで信託報酬も低い銘柄が多く、日経平均株価やNYダウなど特定の指数に連動するため、状況が把握しやすい。
⑵株式中心の投資信託……「全米」「先進国」「全世界」の株式市場を対象に値上がり益を狙う
一般NISAの最大のメリットは運用益が非課税になることなので、ある程度の値上がり益は狙っていきたい。とはいえ個別株は、国内・国外共にハイリスクで商品選びも一定以上の投資経験を必要とする。「全米」「先進国」「全世界」の株式市場を対象とする投資信託であれば、広範囲に地域分散しながら株式に投資できる。
⑶複数資産に投資するバランス型投資信託……自動でリバランスを行ってくれるためNISAの非課税枠を消費しない
一般NISAで株式を含む複数資産に投資すれば、さらに広い意味での分散投資が可能だ。バランス型投資信託は1つの銘柄で株式・債券・REIT等をカバーする。組み入れ比率はファンドによってさまざまで、固定のものもあれば状況に応じて変動するものもある。
バランス型投資信託のメリットはリスク分散だけではない。市場環境に合わせてファンドが自動的にリバランスする機能を持っているため、組み換えのために保有商品を売却して非課税枠を消費せずに済む点も大きい。
5.一般NISAで投資信託を運用する証券会社選びの3つのポイント
NISAは1人1口座が原則だ。普通口座のように銀行や証券会社それぞれに保有することはできない。1年単位で金融機関の変更は可能だが、その年にNISA口座での買い付けが1件でもあれば変更不可、手続きも再度税務署の審査が必要になるなど面倒だ。できれば最初から相性の良い金融機関を選んでおきたい。
ではどのような視点でNISA用の証券会社を選べばよいか。非課税になる仕組みや投資できる金額には金融機関ごとに差異はない。NISAで運用する投資信託に関して言えば、証券会社を選ぶ際のポイントは以下の3つが考えられる。
ポイント1……投資信託の取扱数と種類の豊富さ
投資信託の取扱数は重要なので必ず確認しておきたい。いざ買う段階になって欲しいものがないでは困る。取扱数は証券会社によって1~2本というところもあれば2,000本というところもある。
単純に本数だけでなく、インデックス型やアクティブ型、国内あるいは海外など、どのようなタイプのファンドに力を入れているか確認したい。NISA口座を開設したい金融機関のホームページで取扱投資信託一覧などを見てみると良いだろう。
ポイント2……すべての投資信託の販売手数料が無料かどうか
つみたてNISAは制度上すべての投資信託が販売手数料無料と決められているが、一般NISAは各金融機関が取り扱っている投資信託によって手数料がかかる場合がある。たとえばSMBC日興証券では約1,000本の取扱投資信託のうち、400本は購入時に手数料が発生する。
しかし最近では個人投資家の支持を得るため、NISA対象銘柄をすべて販売手数料無料(ノーロード)銘柄にする証券会社も出てきた。ネット証券で特にその傾向が見られる。一律で手数料無料であれば投資信託を選ぶ際に迷わなくて済む。一般NISAは一括で高額購入も可能なため、最初にかかる販売手数料は重要だ。
ポイント3……スクリーニング機能、ポイント制度などの独自策
スクリーニング機能、ポイント付与サービス、投資信託ランキングや開示情報など、細かいながら使い勝手に大きく影響する機能がどのくらい充実しているかについても見ておきたい。たとえばスクリーニング機能だが、投資信託を検索する際、自分に適した銘柄が見つけやすい検索機能を備えた証券会社が便利だ。
投資信託の購入額や保有残高に応じてポイントが付与されるサービスがあれば、非課税で運用しながらポイントも得られて一石二鳥だ。
また、積立投資信託はリスクを分散させ時間を有効活用して資産形成したいコツコツ型の投資に向いている。NISA口座で積立投資が可能か、可能なら最低投資額はいくらかなど確認しておきたい。最近は「100円積立」など超少額投資が可能な証券会社も増えている。
6. 一般NISAで投資信託を運用するおすすめ証券会社5社を徹底比較
前述の3つのポイントを踏まえ、一般NISAで投資信託を運用するのに適していると思われる証券会社を5社ピックアップした。
証券会社名 | 投資信託取扱数 | 販売手数料 | 特典 |
SBI証券 | 2,646本 | 無料 | Tポイント投信マイレージサービス 100円積立 |
楽天証券 | 2,687本 | 無料 | 楽天ポイントプログラム 100円積立 |
松井証券 | 1,308本 | 無料 | 信託報酬毎月現金還元サービス ロボアドバイザー 100円積立 |
マネックス証券 | 1,172本 | 無料 | マネックスポイント 毎日積立、100円積立 |
auカブコム証券 | 1,268本 | 無料 | 保有残高に応じてPontaポイント 100円積立 |
投資信託の取扱数や種類が豊富で、NISA対象商品の販売手数料が無料、独自の特典プログラムがある証券会社を探すと、必然的に大手ネット証券に条件を満たすところが多かった。
特に上記5社は取扱商品数が多く、販売手数料はすべて無料(信託報酬はファンドによって別途かかる)、100円から始められる積立投信や、保有残高に応じて付与されるポイントサービス、NISAの仕組みの説明やファンドの解説といった情報コンテンツも充実している。取引に便利な専用ツールやアプリを使えるのも強みだ。
野村證券をはじめとする従来の対面型証券会社は、取扱商品数は少なくないものの販売手数料無料の商品は乏しい。手数料を払ってでも誰かと相談しながら運用したいと考える人には良いが、低コストで自分の好きなように運用したいと考えている人には向かないだろう。
7. 一般NISAで投資信託を運用するおすすめ証券会社5社を徹底解説
先ほどピックアップした証券会社5社のメリット・デメリット、向いている人をそれぞれまとめた。
SBI証券……商品の豊富さと手数料の安さでネット証券口座開設数1位
SBI証券は口座数、預かり資産残高、個人株式委託売買代金においてネット証券でトップの大手総合証券だ。NISAについても存在感を発揮し、証券会社に開設されているNISA口座860万口座のうち188万口座はSBI証券で開設されている。
・SBI証券のNISAで投資信託を運用するメリット
SBI証券は取扱商品の豊富さと手数料の低さが最大のメリットだ。取扱投資信託は楽天証券に次いで豊富で、2,600本を超える。投資信託の種類も多彩で、インデックス型からアクティブ型、国内から先進国・新興国・グローバル全体、株式重視または債券重視、地域資産を分散させたバランス型など幅広い。しかもすべて販売手数料・売却手数料無料だ。
投資信託だけでなく、国内株式、米国・中国(香港)・アセアン各国・韓国・ロシアなどの9ヵ国の海外株がNISA口座に対応している。IPOの取扱数も多い。
積立投信は少額から始められるのが魅力だ。SBI証券の投資信託は多くが100円積立に対応している。月額100円だと年間120万円の非課税投資枠を使い切ることはできないが、初心者にとって心理的ハードルが少なく、複数の投資信託をお試しで比較できるメリットがある。
投資信託を運用することでTポイントがたまる点にも注目だ。SBI証券では月間平均保有額に対し0.1%相当のTポイントが付与されるなどの「投信マイレージサービス」を行っている。5年かけてNISAの最大非課税枠600万円分をすべて投資信託購入に充てた場合、5年目以降は年間6,000ポイントが受け取れる。
・SBI証券のNISAで投資信託を運用するデメリット
SBI証券の魅力はその投資信託の品揃えの豊富さにあるが、これがデメリットに働く場合もある。銘柄選びが大変になるのだ。SBI証券のホームページで取扱一覧の閲覧や銘柄検索が可能だが、慣れていないとどのように絞り込みをしたらよいのか分かりにくい。SBI証券の投信検索には自身の投資方針や好みを入力することで自動的に推挙してくれるような機能はない。
また、取扱銘柄の中には中長期投資には向かないハイリスク・ハイリターン商品や投資経験者向けの商品が多く含まれているため、ランキング等を参考にした初心者が思わぬリスク商品に手を出すに危険性がある。
コモディティ、ヘッジファンド、ブル・ベア型などは短期投資向きの商品だ。毎月分配型の投資信託も700本以上含まれる。これは運用しながら資産を取り崩す性質のファンドなので、長期の資産形成には適していないため注意したい。
・SBI証券のNISAで投資信託を運用するのがおすすめな人
SBI証券は基本的に初心者から経験者までを対象とするオールマイティな証券会社ではあるが、初心者にとっては選択肢が多すぎて選びにくいという特徴がある。他のファンド情報などで目当ての投資信託を探す手段を持っている人や、投資信託以外の多様な商品にも挑戦してみたいと考えている人には向いているだろう。
楽天証券……NISA投資信託取扱No.1で充実のポイントプログラム
楽天証券はネット証券でSBI証券に次ぐ規模を誇る。NISA対象の投資信託取扱数では業界トップの位置づけだ。
・楽天証券のNISAで投資信託を運用するメリット
楽天証券の特筆すべき点は取扱商品の豊富さだ。業界トップのSBI証券に引けを取らない。NISA対象の投資信託は現在のところ取扱件数で1位、種類も幅広い。あらゆるファンドタイプ、資産タイプ、投資地域のファンドがそろっている。投資信託を検索できる「投信スーパーサーチ」は条件の項目が多く、キーワード検索などもできるので件数が多くても絞り込みがしやすい。
国内株式のみならず、米国・中国・アセアン各国・海外ETF海外株がNISA口座に対応している。ほぼすべての投資信託で積立投資は100円から可能だ。
スマートフォンで運用管理をしたいと考えているなら、楽天証券のトレーディングツールであるマーケットスピードやスマートフォンアプリの「iSPEED」が使える点も大きいだろう。これらの取引ツールもNISAに対応している。
楽天証券は投資に関する情報サイトや勉強会・セミナーが豊富なのも特徴的だ。投資信託保有残高に応じて楽天ポイントが付与されるシステムや、積立投信の決済方法を楽天カードにすることでポイントが得られるポイントプログラムも魅力だ。
・楽天証券のNISAで投資信託を運用するデメリット
あえて挙げるとすると、楽天証券のNISAで投資信託を運用するデメリットは「ポイントグラムが分かりにくい」という点がある。まず、楽天銀行に口座があるかどうかで付与率が異なる。かつ利用するには楽天銀行と楽天証券の口座連携サービス「マネーブリッジ」と「楽天銀行ハッピープログラム」への登録手続きが必要だ。これが複雑で分かりにくい。ただし手続きと条件をクリアすると投資信託の残高10万円ごとに毎月4ポイントを受け取ることができるため還元率は高い。
・楽天証券のNISAで投資信託を運用するのがおすすめな人
NISAや投資に関するさまざまな情報が得られて、取引における分かりやすさを重視する投資家には楽天証券が最適だ。また、楽天ポイントとの親和性の高さを考えると、楽天ユーザーなら一番の候補になるだろう。
松井証券……サポート体制万全で初心者も安心、無料のロボアドバイザーも
松井証券は玄人向きのようで実は初心者にもやさしい100年の歴史を持つ老舗証券会社だ。従来の対面式の証券会社の中でいち早くインターネットを取り入れた先進的な企業でもある。
・松井証券のNISAで投資信託を運用するメリット
SBI証券や楽天証券よりは規模が落ちるものの、NISA向け投資信託は1,000本以上の取り扱いがあり十分な選択肢がある。すべての商品において買付時と売却時の手数料が無料だ。
松井証券で特筆すべきはそのサポート体制の頼もしさだ。電話・メール・チャット・お客様専用サイトなど多くのチャネルからの問い合わせに対応している。松井証券の口座保有者向けにはインターネット上でパソコン画面を共有しながら操作方法などを説明するサービスも行っている。HDI-Japan(ヘルプデスク協会)主催の2020年度問合せ証券業界窓口格付けにおいて、最高評価である「三つ星」を10年連続で獲得するほどの充実ぶりだ。
松井証券は取引ツールや情報提供にも力を入れている。特に投資信託の投資提案から運用までスマートフォンで管理できる「投信アプリ」は興味深い。ロボアドバイザーが利用者の投資スタイルやリスク許容度を計測し最適なポートフォリオを提案してくれるツールだ。現在保有中の投資信託よりも評価の高いファンドを探す機能もある。スクリーニング検索はどの証券会社も取り入れているが、松井証券のロボアドバイザーはさらに一歩踏み込んでいる。しかも利用は無料だ。
なお、松井証券では投資信託保有残高に応じてポイント還元ではなく、現金還元を行っている。信託報酬の年率0.3%を超える分は口座に振り込まれる。もちろん分配金は別に満額支払われる。
・松井証券のNISAで投資信託を運用するデメリット
NISA対象の投資信託の数は十分だが、投資信託以外の金融商品についても興味がある場合、松井証券では海外株式や債券などは扱っていないので注意したい。
また、ツールが豊富なのはありがたいが、トレーディングツール、株価ボード、ニュース/レポート、企業情報などツールごとに使える機能が分散しているのはやや不便だ。パソコンで使えるものとスマートフォンで使えるもので分かれているというのもある。機能は絞ったほうが性能は良くなるという事情もあるだろうが、それぞれを使いこなすのには時間がかかるだろう。
・松井証券のNISAで投資信託を運用するのがおすすめな人
松井証券は初心者から上級者まで満足できる投資環境が整っている。信頼性のある事業者で先進的な機能を使いこなしたいなら松井証券がおすすめだ。投資のノウハウや情報をどんどん吸収したいと考えている人には最適と考えられる。
マネックス証券……NISAサービスリニューアルでさらに使いやすく
マネックス証券を率いるのは著名経営者である松本大氏だ。マネックス証券はNISA対象の投資信託が豊富で、販売手数料はすべて無料である。2020年9月23日にNISAサービスがリニューアルされたことで、ユニークな機能が追加されている。
・マネックス証券のNISAで投資信託を運用するメリット
マネックス証券は「一歩先の未来の金融」を企業理念とするだけあって、ツールやアプリの提供に力を入れている。松井証券もツールの種類が豊富だが、マネックス証券のほうが対象商品・使用媒体ごとのラインアップが充実しているようだ。また、IPO(新規公開株)の公平な抽選方法で有名な証券会社でもある。マネックス証券ではIPOもNISAに対応しているので、投資信託以外の商品も検討しているなら一考に値する。
2020年9月のNISAサービスリニューアルにより、NISA口座に資金を振り替えなくてもすぐに取引が可能になる機能が追加された。また積立頻度を「毎日」に設定することや、投信積立で非課税枠をぴったり使い切る機能も付けられたため、利用者にとって利便性が高くなっている。
マネックス証券で取り扱う約8割のファンドについて、年率0.08%または0.03%のマネックスポイントが取得できる。ポイントはマネックス証券での株取引手数料に使えるほか、dポイントやAmazonギフト券、Tポイント、JALやANAのマイレージなどに交換できる。
・マネックス証券のNISAで投資信託を運用するデメリット
投資信託の品揃えや手数料、ツールの使い勝手については問題ないが、ポイント制度はやや貧弱なように感じられる。一部の銘柄はポイント制度の対象外で、付与率も他社に比べて低めだ。
・マネックス証券のNISAで投資信託を運用するのがおすすめな人
マネックス証券のNISAにおける投資信託は、取扱数やコスト、特典サービスにおいて十分な満足度を得られるだろう。だが、そのために新たに総合口座から開設するインセンティブになるかどうかは疑わしい。マネックス証券は米国株やETFの取扱、あるいはIPO取引において定評があるので、投資信託と同時にそれらの投資も視野に入れたい場合は検討してみても良いだろう。
auカブコム証券……大手銀行と通信会社との連携で信頼性と安全性と確保
auカブコム証券は金融大手の三菱UFJフィナンシャル・グループの子会社で、国内3大通信企業のauが資本参加しているため、財政基盤が強固だ。大手ネット証券で唯一「システム完全内製化」を行い、システムの自社開発と運用を手掛けている。
・auカブコム証券のNISAで投資信託を運用するメリット
auカブコム証券のNISAにおける投資信託は、取扱数が1,000本以上、電話による取引も含めすべて販売手数料無料だ。100円からの積立投資も可能と、これまで紹介した他社とも遜色ない。
auカブコム証券は親会社や提携会社との連携による特典が多く見られる。たとえばauに通信契約のある人なら、投資信託の保有残高に応じて毎月0.05%~0.24%のPontaポイントを還元してもらえる。対象になるのはauIDを保有していて同社の口座で投資信託を保有している人だ。
また、グループ子会社ということもあって、MUFGの独自レポートや最新マーケット情報が閲覧できるのは特権といえるだろう。三菱UFJモルガン・スタンレー証券のレポート、フィスコなどのマーケットニュース、オリジナル投資情報のタイムリー配信など幅広い情報源が無料で利用できる。株スクールやカブ四季総会をはじめとするセミナーや勉強会も随時開催されている。
・auカブコム証券のNISAで投資信託を運用するデメリット
auカブコム証券の大きな特徴は、本格的なトレードツールと処理速度の高い取引システムだ。早い値動きにも対応できる自動売買機能やリアルタイム株価予想などデイトレードにも耐えうるスペックを兼ねそなえている。信用取引や先物・オプション取引向きだ。しかしNISAで投資信託を運用する際にはそのようなトレードツールは宝の持ち腐れである。
・auカブコム証券のNISAで投資信託を運用するのがおすすめな人
auカブコム証券のNISAで投資信託を運用するのに向いている人は、auの通信契約があり、投資信託以外にも現物取引、信用取引、先物・オプション取引などで短期売買・リアルタイム取引をするような投資経験者だ。初心者で、インデックス型投信をNISAで運用する程度であれば、あえて同社を選ぶ必要性は低いかもしれない。
8.一般NISAで初心者が買ってはいけない3つの投資信託
投資初心者が一般NISAで買うべきではない投資信託の特徴はどのようなものだろうか。
⑴債券中心の投資信託……非課税期間が短い一般NISAには不向き
債券投資はリスクが低く抑えられる反面、リターンもあまり多くは望めない。債券中心の投資信託は安全性が高く低コストなので、老後資金などの長期投資に向いている。
一般NISAの場合、非課税期間が5年ということもあり、債券で十分な運用益を得るには時間が足りない。せっかくのNISAの非課税効果を活用したいのであれば、債券中心に投資するファンドを選ぶのは賢明とは言えないだろう。
⑵レバレッジ型の投資信託……値動きが大きいためコントロールが難しい
一般NISAで購入できる投資信託やETFの中には、「ブル型」「ベア型」と呼ばれるタイプの投資信託が存在する。これらは、対象となる株価指数の2倍や3倍の値動きをするレバレッジ商品だ。先物取引に該当する短期志向の商品であるため、大きな値上がり益や下落相場での活用が期待できる。
一方で、指数に連動しない値動きをしたり想定以上の損失を受けたりする可能性があるため、投資に慣れていない初心者が選ぶ商品ではない。
⑶毎月分配型の投資信託……元本払戻金が発生する場合はNISAのメリットが活かされない
毎月分配型など決算頻度の高い投資信託への投資は、一般NISAでは慎重になるべきだ。毎月分配型の投資信託は長期の資産形成には向いておらず、元本を取り崩してでも毎月一定の分配金を求めるシニア層のニーズが高い。
運用収益から支払われる普通分配金は課税対象なのでNISAの非課税メリットが活かされるが、元本を切り崩して分配金が支払われる元本払戻金(特別分配金)の場合は、もともと非課税のためNISAの非課税メリットが得られない。また、投資信託の分配金を受け取らず再投資することも可能だが、その際、その再投資分がNISAの非課税枠を消費してしまう点もマイナスだ。
9.一般NISAで初心者におすすめの投資信託5選
では具体的にNISAではどのような商品が初心者に良いのだろうか。前出の「買うべき投資信託」の条件を満たすおすすめ投資信託を5つ紹介する。
SBI・バンガード・S&P500インデックス・ファンド……長期投資向きの銘柄ながら十分な値上がり益が見込める
低コストなインデックス投資信託という点では、SBIアセットマネジメントが運用する「SBI・バンガード・S&P500インデックス・ファンド」が優れている。米国の代表的な株価指数であるS&P500指数に連動するファンドだ。
運用会社であるバンガードのETF(上場投資信託証券)を主な投資対象とするため、徹底的にコストが抑えられている。信託報酬は年率0.0938%(税込)と最低水準だ。同分類のファンドで信託報酬が0.1%を下回るファンドはそう多くない。
ファンド設定日は2019年9月26日とかなり新しい。つみたてNISAに採用されていて、長期投資向きの銘柄だが、2020年6月30日を基準日とする期間収益率は3ヵ月で15.59%と、一般NISAでも値上がり益が十分見込める。ただ純資産総額は約461億と、1,000億円を超えるような大型ファンドには及ばない。
<購入できる金融機関例>
eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)……コストの低さと分かりやすさが評価される人気ファンド
eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)は、三菱UFJ国際投信が徹底した低コストを目指した「eMAXIS Slimシリーズ」の代表的銘柄だ。信託報酬は年0.0968%(税込)とシリーズ商品の中で最も低い。
「eMAXIS Slimシリーズ」は、他社類似ファンドの信託報酬が自社のファンドを下回る場合、自社の信託報酬率を引き下げるという徹底ぶりで、2017年の設定以来、何度も信託報酬を引き下げてきた実績を持つ。
eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)は221人の投信ブロガーが選ぶ『Fund of the Year 2019』で2位に選ばれている。運用コストの低さと分かりやすさが評価されているようだ。ちなみに同社の、“Slim”がつかない「eMAXISシリーズ」にも米国株式(S&P500)に投資するものがあるが、全くの別商品である。
<購入できる金融機関例>
<購入・換金手数料なし>ニッセイ外国株式インデックスファンド……純資産総額がトップクラス
<購入・換金手数料なし>ニッセイ外国株式インデックスファンドは、ニッセイアセットマネジメントが運用するインデックスファンドシリーズの1つだ。日本を除く先進国の株価を示すMSCIコクサイ・インデックスに連動する。信託報酬は年0.1023%(税込)と低めに抑えられており、S&P500よりも広い範囲で海外株式への分散投資ができる。1,803億5,100万円もの純資産総額は、数ある投資信託の中でもトップクラスで、ファンドへの信頼性の高さがうかがえる。
2020年3月には大きな値崩れがあったものの、4月から5月にかけて上昇を続けており、長期では1年で2.36%、3年で5.31%ものトータルリターンを出している。ただし、これは最近先進国の好調が続いているからで、米国に経済不安が発生すると連鎖的に下落するリスクはある。
<購入できる金融機関例>
eMAXIS Slim バランス(8資産均等型)……バランスファンドの中では信託報酬が低め
複数資産に分散投資するバランスファンドのうち、信託報酬が低めで純資産総額が高め、株式組み入れ比率が一定以上あるのが、eMAXIS Slimシリーズの「バランス(8資産均等型)」である。8資産とは「国内株式」、「先進国株式」、「新興国株式」、「国内債券」、「先進国債券」、「新興国債券」、「国内REIT」、「海外REIT」を指す。組み入れ比率はそれぞれ12.5%ずつで、株式37.5%、債券37.5%、RIET25%という配分だ。
信託報酬は年0.154%(税込)とインデックス型より高くなっているが、1%や2%が当たり前というバランス型の中では格段に低い。株価上昇局面では株式100%のファンドよりも影響度が1/3程度となってしまうが、その分リスクも抑えられる。
<購入できる金融機関例>
ひふみプラス……純資産総額5,000億円超えの大人気アクティブファンド
レオス・キャピタルワークスが運用するひふみプラスは、特定の指標に連動した運用成果を目指すインデックス投資とは異なり、割安と思われる上場株式に投資して積極運用を行う。アクティブ型投資信託に分類されるが、極端にリスクの高い商品ではない。長期安定運用に適している銘柄のみが認定されるつみたてNISAの採用銘柄にも採用されている。
常に100%株式を保有するのではなく、状況に応じて現金化するなどして株式組み入れ比率を変動させるのが特徴だ。手間とノウハウを必要とするので信託報酬は年率1.0780%(税込)と高めだが、純資産総額5,205億円の大人気銘柄である。株価変動リスクはインデックス型に比べると高くなるものの、5年の非課税期間をフルに活かせる。
<購入できる金融機関例>
10.NISAで投資信託を運用するならデメリットに注意
NISAで何を買ったらいいか迷った場合は、投資信託は非常に使い勝手の良い商品である。ただしNISAでは商品のラインアップが他の税優遇制度のように安全性の高いものばかりではないことに注意したい。非課税期間である5年のタイムリミットを迎えるまでに、出口戦略をあらかじめ考えておいたほうが良いだろう。
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