eMAXISはここ数年で急激に純資産残高を伸ばしている投資信託シリーズで、eMAXIS Slim(イーマクシス・スリム)はそのなかの1つのブランドだ。eMAXIS Slimの特徴を押さえながら、NISAやつみたてNISAで購入するときの注意点を考えてみたい。

eMAXIS Slim(イーマクシス・スリム)とはノーロードのインデックスファンド

eMAXISは「ネット向け投信」と呼ばれる、主にインターネット経由で取引される投資信託に分類される(一部販売会社では店頭での取引も可能)。eMAXISシリーズとは三菱UFJ国際投信が設定・運用する投資信託ラインアップの総称だ。

シリーズに含まれる商品は59本あり、すべてノーロードのインデックスファンドである。投資対象地域は国内のみならず先進国・新興国あるいは全世界、投資対象資産は株式・債券・REIT、複数の資産を組み合わせたバランス型と幅広い。

販売手数料がかからず特定の指数に連動する投資成果をめざすタイプの商品なので初心者にも分かりやすい投資信託なのも魅力だ。また徹底したコスト業界最低水準を目指しており、たびたび信託報酬の引き下げを行っている。

eMAXISシリーズは2009年10月に設定開始し、順調に合計純資産残高を伸ばしている。投資信託市場は全体で65兆円のうちネット投信は1兆円程度だが、2018年には過去5年で6.5倍に増加、2019年12月には5,000億円を突破した。

eMAXIS SlimはeMAXISシリーズのうちの1つ

eMAXISにはいくつか種類がある。ベーシックな「eMAXIS」、コモディティなどハイリスク商品を対象とした「eMAXISプラス」、宇宙開発・ロボット・自動運転などテーマ投資ができる「eMAXIS Neo」、より低コストを意識した「eMAXIS Slim」だ。

eMAXIS Slimは2020年3月時点で13商品を展開しているシリーズだ。eMAXISシリーズの残高のうち45%を占めるほど好調なので、今後さらにeMAXIS Slimが追加される可能性は高い。

eMAXISに似た投資信託もある

eMAXISに類似した投資信託はいくつかある。三井住友トラスト・アセットマネジメントの「SMTインデックスシリーズ」、ニッセイアセットマネジメントの「購入・換金手数料なし」シリーズ、野村アセットマネジメントの「ファンズアイ(Funds-i)」、アセットマネジメントOne「たわらノーロード」などだ。

eMAXISとeMAXIS Slimの違い

eMAXIS SlimとeMAXISは名前も類似し、同じような指標のインデックスファンドを扱っているため混同されがちだ。2つの違いを「手数料」と「販売チャネル」から比較してみよう。

eMAXIS SlimのほうがeMAXISよりも手数料(信託報酬)が安い

両シリーズの大きな違いはコストだ。販売手数料が無料なのは共通しているが、保有中に発生する信託報酬はeMAXIS Slimシリーズのほうが低めである。

試しに同じインデックス(指標)をベンチマークとする投資信託がeMAXISシリーズとeMAXIS Slimシリーズではどう違うのか比較してみよう。(2※020年4月8日を基準日とする)

<eMAXIS先進国株式>
基準価額:2万3,996円
純資産総額:359.78億円
信託報酬:年率0.66%(税抜 年率0.6%)以内

<eMAXIS Slim先進国株式>
基準価額:1万626円
純資産総額:789.26億円
信託報酬:年率0.1023%(税抜 年率0.093%)以内

いずれも日本を除く先進国の株価動向を示す「MSCIコクサイ・インデックス」と連動する投資成果をめざすファンドだ。基準価額はeMAXISのほうが高いが、純資産総額ではeMAXIS Slimが好調のようだ。

注目すべきは信託報酬の差で、0.5%以上の開きがある。投資金額100万円、運用期間5年でシミュレーションすると、信託報酬の年率の違いが支払うコストに与えるインパクトは大きい。

eMAXIS(信託報酬:年率0.66%)=3万4,118円
eMAXIS Slim(信託報酬:年率0.1023%)=5,102円

上記のようにeMAXISのほうがeMAXIS Slimよりもコストが3万円弱安い。

インデックス投資はハイリターンが見込める投資法ではないため、ひかえめな収益を目減りさせる手数料はできる限り少ないほうが良い。コストを重視するならeMAXIS Slimを選ぶのが賢明そうだ。

eMAXIS Slimを取り扱う金融機関は17社、eMAXISシリーズは105社

eMAXIS Slimがここまで低コストを実現できるのは販売チャネルを絞っているからだろう。eMAXISシリーズの販売会社は銀行と証券会社合わせて105社に対し、eMAXIS Slimシリーズは17社だ。

eMAXIS Slimシリーズを扱うのはいずれもネット証券または銀行のインターネット専用販売に限られる。信託報酬は販売会社にも支払われるので、信託報酬が低いファンドを扱うことに同意が得られる金融機関が少ないことも一理あるだろう。

eMAXIS Slimシリーズの取り扱いがある金融機関とつみたてNISA(積立NISA)対象銘柄

eMAXIS Slimシリーズの取り扱いがある17社は以下だ。ただし販売会社によっては、取り扱わないファンドがある(※印が付いている金融機関は一部取り扱いがない)。取り扱いのある銀行や証券会社ならNISA制度を使って非課税で売買することができる。

つみたてNISA(積立NISA)対象のeMAXIS Slimシリーズは9銘柄

つみたてNISAの対象商品になるには、金融庁から長期安定的な積立投資に適していると認める条件をクリアする必要がある。

もともとeMAXIS SlimシリーズはつみたてNISA向きの評価の高さで業績を伸ばしてきた背景もあり、商品のほとんどが長期積立向きである。実際にeMAXIS Slimシリーズは13銘柄中9銘柄が適格となっている。

先ほどの販売会社で以下の取り扱いがあれば、つみたてNISA口座で保有できる。

  • eMAXIS Slim 国内株式(TOPIX) 
  • eMAXIS Slim 国内株式(日経平均)
  • eMAXIS Slim 新興国株式インデックス
  • eMAXIS Slim 先進国株式インデックス
  • eMAXIS Slim 全世界株式(3地域均等型)
  • eMAXIS Slim 全世界株式(除く日本)
  • eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)
  • eMAXIS Slim バランス(8資産均等型)
  • eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)

       一方、以下の4銘柄はつみたてNISAの対象には入っていない。取り扱いのある金融機関であれば一般NISAで購入できる。

  • eMAXIS Slim 国内リートインデックス
  • eMAXIS Slim 先進国リートインデックス
  • eMAXIS Slim 国内債券インデックス
  • eMAXIS Slim 先進国債券インデックス

eMAXIS Slimシリーズを初心者が買うメリット・デメリット

投資信託ではどれほどのリターンが見込めるか判断がまだ難しい状況では、いかにコストを低く抑えるかが重要になる。特にインデックス投資ではそれが顕著だ。eMAXIS Slimシリーズは、そのコストの低さから初心者が買うのに適した投資信託といえる。

安定性も重要だ。eMAXIS Slimシリーズは市場全体に投資するインデックス型が中心となっており、地域や資産を幅広く分散投資できる。とりわけつみたてNISA適格の9銘柄に関しては信頼性が高い。

eMAXIS Slimシリーズで積立投資が容易に

つみたてNISAの対象商品となるには、一定水準以下の身体報酬、信託契約期間が無期限または20年以上、分配頻度が毎月でないことなど細かな条件をクリアする必要がある。いずれも長期安定的な運用に不可欠な要素だ。

初心者にとって難易度が高い「銘柄選び」と「売買のタイミング」が、eMAXIS Slimシリーズに積立投資をすることによって容易になる。

eMAXIS Slimシリーズのデメリット

eMAXIS Slimシリーズのデメリットとしては、取り扱っている販売チャネルの少ない点が挙げられる。徐々に増えてきているとはいえ販売会社はインターネット専用の17社のみだ。対面で投資信託を販売している金融機関では店頭でeMAXIS Slimシリーズは購入できない。

またeMAXIS Slimシリーズを取り扱うすべての会社が、全13商品のラインアップをそろえているわけでもない。

NISA口座にeMAXIS Slimシリーズがあれば購入を検討

eMAXIS Slimはメリットも多いが、現在使っているNISA口座でのeMAXIS Slimの取り扱いがないからといって、そのために別の金融機関にNISA口座を開設するかは考えものである。

新商品が次々と開発され、低コスト競争も激しいなかで、いつまでもeMAXIS Slimシリーズの優位が続くとは限らない。無理をしてまでeMAXIS Slimシリーズを購入する必要はないのかもしれない。

現在使っているNISA口座でeMAXIS Slimシリーズの取り扱いがある場合は、運用を検討してみるといいだろう。

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篠田わかな
執筆・篠田わかな
外資系経営コンサルティング会社で製造・物流・小売部門のコンサルタント業務/システム改革プロジェクトに参画。退職後独学でFP技能士の資格を取得。開業して個人事業主となり、マネー・ビジネス分野の執筆、企業からの請負業務を手がける。
外資系経営コンサルティング会社で製造・物流・小売部門のコンサルタント業務/システム改革プロジェクトに参画。退職後独学でFP技能士の資格を取得。開業して個人事業主となり、マネー・ビジネス分野の執筆、企業からの請負業務を手がける。

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