NISAは年間120万円までの投資から得られた売却益や配当金などにかかる税金が非課税になる優遇制度だ。NISA口座はさまざまな金融機関で開設できるが、1人1口座しか開設できないため、後悔しないように選びたい。投資初心者にとってなじみ深い金融機関といえば銀行だが、銀行でNISA口座を開設するときには注意しておくべき点がある。

目次
1. NISA口座を開設できない銀行もある
2. 銀行はNISAで購入できる商品の種類や数が少ない
3. 銀行で投資信託を購入すると販売手数料が高くつきやすい
4. NISA口座を銀行で開設すべき人は
5. 口座は一つしか作れないが変更はできる

1.NISA口座を開設できない銀行もある

NISA口座はどの銀行でも開設できるわけではない。まずはNISA口座を開設したいと思っている銀行でNISA口座を開設できるのか確認する必要がある。主な銀行におけるNISA口座開設の可否は次の通りだ。

銀行名 NISA つみたてNISA
みずほ銀行
三井住友銀行
三菱UFJ銀行
りそな銀行
ゆうちょ銀行
横浜銀行
イオン銀行
ジャパンネット銀行
ソニー銀行 ×
楽天銀行 × ×
住信SBIネット銀行 × ×
※各行HPから筆者作成(2020年7月時点)

 

NISA口座はメガバンクやゆうちょ銀行、地方銀行など、多くの銀行で開設できる。一方で楽天銀行や住信SBIネット銀行などNISA口座を開設できない銀行もある。これらの銀行では、NISAを取り扱う楽天証券やSBI証券など、同じグループ内の証券会社での口座開設が必要になる。

NISA口座開設を希望する銀行の取扱商品に注目

NISAで非課税となる商品は上場株式や株式投資信託、公社債投資信託、ETFなど多岐にわたる。しかし、NISA口座を開設した金融機関で取り扱っていない商品には投資できない。NISA口座を複数の金融機関で持つことはできないため、せっかく口座を開設しても投資したい商品を購入できなければ意味がない。

銀行のNISAで買える金融商品は、株式投資信託に限られている。株式の個別銘柄は基本的に売買できないのだ。例えばみずほ・三菱UFJ・三井住友の3大メガバンクは、いずれも株式投資信託のみ取り扱っている。

銀行窓口で株式売買の取次ぎを行うことは法令で認められているが、あくまでも「仲介」であり、当該銀行の口座で保有するわけではない。

2.銀行はNISAで購入できる商品の種類や数が少ない

NISA口座で株式を売買できないというのは、リスクを取って利益を得たいと考える人にとってはデメリットと言える。値動きの激しい株式はときに莫大な利益を生む。その際、高い節税効果を得られるのがNISAのメリットの一つだからだ。

例えば、株式が5年間で10倍になることは十分あり得るが、投資信託で同等のパフォーマンスを得られる可能性は低い。税率を20%としたとき、NISA口座で100万円投資した株式がもし1,100万円になったら、200万円の節税効果がある。NISAは株式のように価格変動性の高い商品に投資することでより活きてくる。

銀行のNISAで取り扱う商品数は証券会社に比べ少ない

銀行は投資信託の取扱銘柄数自体も、証券会社に比べて少ない。参考にメガバンクとゆうちょ銀行、ネット銀行3社が取り扱う投資信託の銘柄数をみてみよう。

  • みずほ銀行……184銘柄
  • 三井住友銀行……198銘柄
  • 三菱UFJ銀行……468銘柄
  • ゆうちょ銀行……128銘柄
  • イオン銀行……318銘柄
  • ジャパンネット銀行……419銘柄
  • ソニー銀行……242銘柄

※各行HPから筆者作成(2020年9月11日時点)・販売中のファンドのみ

銀行で取り扱う投資信託の銘柄数は、みずほ銀行が184銘柄、三井住友銀行が199銘柄、三菱UFJ銀行が464銘柄、ゆうちょ銀行が128銘柄となっている。

ネット銀行では、イオン銀行が318銘柄、ジャパンネット銀行が419銘柄、ソニー銀行が242銘柄となっており、メガバンクと比べても銘柄数にあまり差はない(いずれも2020年7月時点)。

証券会社のNISAは銀行よりも取り扱う商品の種類や銘柄数が多い

一方、証券会社では取り扱う商品の種類や銘柄数が多い。参考に、大手対面証券とネット証券におけるNI SA対象商品や投資信託の銘柄数をみてみよう。

証券会社名 投資信託 日本株式 外国株式
野村證券 949銘柄
IPO銘柄も対象
×
大和証券 368銘柄
IPO銘柄も対象

20ヵ国
SMBC日興証券 1,038銘柄
IPO銘柄も対象
×
SBI証券 2,583銘柄
IPO銘柄も対象

9ヵ国
楽天証券 2,603銘柄
6ヵ国
松井証券 1,258銘柄
IPO銘柄も対象
×
※各社HPより筆者作成(2020年9月時点)
※1 IPO(新規公開株式)銘柄も対象

 

投資信託の取扱銘柄数は、対面販売主体の野村證券で949銘柄、大和証券368銘柄、SMBC日興証券1,038銘柄となっている。ネット証券はさらに取扱数が多く、SBI証券では2,583銘柄、楽天証券で2,603銘柄と、みずほ銀行や三井住友銀行の10倍以上だ(いずれも2020年7月時点)。

NISAの商品数なら銀行よりも証券会社のほうが圧倒的

証券会社では上場株式と投資信託、場合によっては外国株式もNISA扱いで売買できる。それに対して銀行は株式投資信託に絞っているところがほとんどで、投資信託の取扱銘柄数自体も少ない。特別な理由がなければ、あえて銀行を選ぶ必要はないだろう。

3.銀行で投資信託を購入すると販売手数料が高くつきやすい

銀行で投資信託を買うと手数料が高くなりがちだ。銀行の投資信託販売手数料は平均で2.04%。しかしネット証券では販売手数料のかからない「ノーロードファンド」も数多く取り扱っている(金融庁の「家計の安定的な資産形成に関する有識者会議(第2回)」で発表された資料による)。

一般的にインターネット専業の証券会社は費用が安い。店舗の維持費がかからず、総人件費なども銀行に比べて低く済むからだ。

同じ商品を購入するにしても、どの金融機関で購入するかによって販売手数料は次のように違う。

<フィデリティ投信/フィデリティ・USハイ・イールド・ファンド>

販売会社 販売手数料(税込)
※購入代金100万円の場合
A銀行(メガバンク) 購入金額の2.75%
B銀行(メガバンク) 購入金額の3.30%
C銀行(ネット銀行) 購入金額の2.20%
D銀行(ネット銀行) なし
E証券(対面証券) 購入金額の3.30%
F証券(対面証券) 購入金額の3.30%
G証券(ネット証券) なし
H証券(ネット証券) なし
※各社HPより筆者作成(2020年7月時点)

 

<ピクテ投信/ピクテ・グローバル・インカム株式ファンド(1年決算型)>

販売会社 販売手数料(税込)
※購入代金100万円の場合
B銀行(メガバンク) 購入金額の3.30%
C銀行(ネット銀行) 購入金額の3.30%
D銀行(ネット銀行) なし
I証券(対面証券) 購入金額の3.30%
J証券(対面証券) なし
G証券(ネット証券) なし
H証券(ネット証券) なし
※各社HPより筆者作成(2020年7月時点)

 

上記のように、投資信託をどこで購入するかによって、販売手数料に3%以上の差がつくケースもある。購入金額が100万円なら3万円、窓口を変えるだけで得する。言うまでもなくパフォーマンスに影響する。払わなくて済むお金は払わないほうがいいのは当然と言える。

窓口を構え顧客と対面して販売する方法は、一部の人にとって安心感があるのは事実だ。そのためにコストがかかるのはやむを得ない。銀行の手数料が暴利だと批判しているわけではない。ただ、求めるものが販売員との会話や安心感ではなく、投資信託を買いたいというだけなのであれば、余計な販売手数料を払う必要はない。

松井証券のように、販売手数料が発生する商品でもポイントを還元することによって実質的に無料となるネット証券もある。

販売手数料の全平均は証券会社のほうが高いという調査もある。原因として、銀行における業績評価の方法が変わり、長期投資向けの商品が販売されることが多くなったことが考えられる。ただ、非課税期間が長いつみたてNISAはともかく、本稿で取り上げている一般NISAは、どちらかというと短中期の売買に向いている制度だ。

自分が投資したいタイプの商品が、銀行ならどれくらいの販売手数料がかかるのか見てみるのもよいだろう。

4.NISA口座を銀行で開設すべき人は

購入できる商品の種類や手数料などの点では、あえて銀行でNISA口座を開設するメリットは少ないと言える。銀行でNISA口座を開設するメリットが期待できるのは、次のような人だ。

銀行で取り扱っている商品で「つみたてNISA」を利用する人

つみたてNISAを利用するのであれば銀行で口座を開設するデメリットは少ない。普段利用している銀行を利用したいといった希望があれば、銀行で口座を開設してもよいだろう。

つみたてNISAの対象となる商品は、すべて販売手数料無料のノーロードファンドであり、株式にはそもそも投資できないため、銀行と証券会社で差はない。投資信託のラインナップは証券会社のほうが充実しているものの、投資したい商品やそれに類似した商品を銀行で扱っているなら問題ないだろう。

近くに銀行の店舗があり対面で相談できる安心感が欲しい人

地方では近くに証券会社の店舗がないこともある。近くに店舗があり、すぐに対面で相談できる安心感を求める人には、銀行でNISA口座を開設するメリットがある。

逆に対面でのサービスを求めないのであれば、全国どこでも利用でき、商品ラインナップやコスト面で優れたネット証券を利用したほうがよいだろう。

銀行の住宅ローンの金利優遇を受けられる人

銀行によっては、NISA口座を開設することで住宅ローンの借入金利が優遇される。住宅ローン借入先の銀行で金利の優遇を受けられるなら、その銀行でNISA口座を開設することを検討したい。

例えば三井住友信託銀行の場合、NISA口座1口座あたり年0.01%、夫婦で2口座開設すれば年0.02%金利が引き下げられる。借入金額4,000万円、借入期間35年、元利均等返済という条件の場合、借入金利が0.02%下がれば、総返済額は15万円減る。相対的に見れば大きな金額とまでは言えないが、同じような商品に投資するのであればこの違いは大きい。

5.NISA口座は一つしか作れないが変更はできる

NISA口座をどこの金融機関に開設するかという点は重要だ。開設するとその年は使い続けなければならないからだ。しかし、年単位であれば変更は可能だ。上記のように銀行と証券会社に大別するだけでも特徴が見えてくるのではないだろうか。NISA口座を開設する際は、金融機関をよく比較して決める必要がある。

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竹国弘城
竹国弘城
証券会社、保険代理店での勤務を経て、ファイナンシャルプランナーとして独立。より多くの方がお金について自ら考え行動できるよう、お金に関するコンサルティング業務や執筆業務などを行う。RAPPORT Consulting Office 代表。1級ファイナンシャルプランニング技能士、CFP®︎
HP : https://www.rapportco.com
証券会社、保険代理店での勤務を経て、ファイナンシャルプランナーとして独立。より多くの方がお金について自ら考え行動できるよう、お金に関するコンサルティング業務や執筆業務などを行う。RAPPORT Consulting Office 代表。1級ファイナンシャルプランニング技能士、CFP®︎
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