ほとんどの人がお金の置き場所として銀行に口座を持っていると思うが、証券会社は利用したことがない人は多いだろう。証券会社と銀行はどちらも金融機関だが、その役割や機能は異なる。それぞれの特徴を押さえて、賢く使い分けたい。

目次
1.証券会社と銀行の基本
2.証券会社と銀行で買える金融商品の違い
3,証券会社と銀行は目的によって使い分ける
4.証券会社と銀行はどう違う?よくあるQ&A10選
5.証券会社と銀行は賢く使い分けたい

1.証券会社と銀行の基本

証券会社と銀行は、金融機関として提供するサービスや機能が異なる。共通する部分もあるが、どのような点が違うのだろうか。

証券会社の「直接金融」と銀行の「間接金融」の違い

証券会社も銀行も、企業や国が必資金を調達するにあたって重要な役割を果たしているが、その違いから証券会社は直接金融、銀行は間接金融と呼ばれている。

直接金融とは、資金を必要とする企業や国に対して、資金を提供する側が直接的に出資することだ。例えば、企業が発行する株式を投資家が買うことがそれに当たり、証券会社は仲介役として企業と投資家を結んでいる。投資家はその企業の破綻リスクを負うが、出資金が増えることを期待できる。

それに対して間接金融は、預金者から預かったお金を資金が必要な人や企業に貸し出す。預金者はお金を貸し出す目的で預けるわけではないが、銀行は預金を元に貸し出すため間接金融と呼ばれる。間接金融において、借り手の信用リスクは資金の融通主体である銀行にあるため、預金者はリスクを追わない代わりにリターンも期待できない。

このように証券会社と銀行には仕組みの違いがあるが、一般の利用者が直接金融と間接金融を意識することはあまりないだろう。それよりも、証券会社と銀行にはサービスや商品にどんな違いがあるのかといった、自分の生活に関わることに関心があるのではないだろうか。

そこで、証券会社と銀行にどのような違いあるのか確認してみよう。

証券会社は幅広い投資商品を扱う金融機関

証券会社は、投資に特化した金融機関だ。株式や債券など、銀行では取り扱っていない投資商品を購入できる。同じ種類でも銀行より商品数が多いため、投資に関して言えば証券会社を利用したほうがいいだろう。証券会社の営業員は、普段から株式の値動きや相場に関するニュースをチェックしているため、銀行よりも投資全般について相談しやすいと言える。

銀行は生活に密接した金融機関

銀行は、証券会社よりも生活に関係する多くのサービスを提供している。お金を貯めるだけでなく、光熱費やクレジットカードの引落などの決済機能のほか、ローンを借りることもできる。銀行は、相談できる分野が多岐にわたるのが特徴だ。

証券会社は必要がなければ利用しなくても問題ないが、銀行はそうはいかない。給与の受取には必ず銀行口座が必要であり、決済機能はなくてはならないものだ。そのため、銀行は生涯を通じて使い続ける金融機関と言えるだろう。

2.証券会社と銀行で買える金融商品の違い

証券会社は投資、銀行は生活に密接した金融機関だが、購入できる商品にはどのような違いがあるのだろうか。

証券会社は投資商品の種類と商品数が豊富

証券会社の金融商品は、ほとんどが投資性の高いものばかりだ。主な商品を挙げてみよう。

  • 国内株式/外国株式
  • 国内債券/外貨建株式
  • 国内ETF/海外ETF
  • 投資信託
  • ファンドラップ
  • 外貨建MMF
  • 保険

証券会社は、株式やETFのように銀行では買えない金融商品も取り扱っている。投資信託は銀行でも買えるが、商品数は証券会社のほうが豊富だ。例えば三菱UFJ銀行では約470本、野村證券では約950本、SBI証券では約2,650本(2020年8月時点)の投資信託を購入できる。取扱本数が多いとそれだけ選択肢が多くなるため、多くの投資商品から選びたい場合は証券会社で口座を開設しよう。

銀行は幅広い年代のニーズに応える商品を取り扱う

銀行は生活に密接している金融機関であるため、取り扱っている商品も特定の分野に偏らず多岐にわたる。主な取扱商品は以下のとおりだ。

  • 円預金/外貨預金
  • 投資信託
  • ファンドラップ
  • 保険
  • 債券
  • ローン(住宅、カード、教育、マイカーなど)
  • 信託商品
  • 公営競技/宝くじ

銀行は顧客の多様なニーズに応えるために、様々な金融商品を用意している。投資商品もあるが、保険やローン、信託商品などライフプランに関わるものも多く、若い世代から年金世代まで幅広い年代に必要な金融機関だ。信頼できる銀行やその担当者とうまく付き合えば、生涯を通してお金の悩みや不安を解消してくれるパートナーになるかもしれない。

保険のように、証券会社とは取り扱う目的が異なる商品もある。例えば、死亡保険には遺族の生活のために一定の保険金が非課税になる制度があり、証券会社はこれを利用して投資型の死亡保険を提案する。銀行でも同じことはできるが、どちらかと言えば保障性を重視した死亡保険や医療保険をセットで提案することが多い。同じカテゴリーの商品でも金融機関の違いによって、提案内容が異なることを押さえておきたい。

3.証券会社と銀行は目的によって使い分ける

証券会社と銀行の特徴を一言で表すとすれば、証券会社は「お金を増やす」ことに強く、銀行は「お金を管理する」ことに強い。証券会社と銀行ではそれぞれ強みが違うので、目的に合わせてうまく使い分けたい。

お金を増やすなら証券会社

証券口座に入れたお金は決済や自由な送金には使えないため、日常生活ではお金は銀行に預けておく必要がある。一方証券口座にお金が入っていれば、好きなタイミングで投資に使うことができる。投資に回したいお金は普段から証券口座に入れておき、じっくり商品を選びつつ購入のタイミングを待つのもいいだろう。

ただし対面型の証券会社にある程度まとまったお金を入れておくと、営業員からセールスがかかることもある。セールスを受けたくない人は、ネット証券に預けるほうがいいかもしれない。いずれにしても、実際に投資する時は慎重に検討したい。

目的に分けてお金を管理するなら銀行

複数の目的に分けてお金を管理したいなら、銀行が適している。たとえば、旅行費用や子どもの学費のための積立定期などが考えらえる。定期預金は、普通預金と違って簡単には引き出せない。目的ごとに分けて預けることもできるため、お金の管理がしやすくなるはずだ。

定期預金などでお金を縛られたくない人は、別の銀行で普通預金口座を作って、銀行ごとに口座を使い分ける方法もある。同じ銀行で複数の普通預金口座を作れなくはないが、犯罪に使われることを防ぐため、利用目的によっては断られることもある。ネット銀行には、代表口座の他に決済機能のない目的別口座を作れる銀行もあるため、複数の銀行に口座を持ちたくない場合は検討してほしい。

証券会社でお金を貯める方法もある

証券会社は投資に特化した金融機関だが、あえて証券口座でお金を貯めるという使い方もできる。銀行口座ほど引き出しやすくないため、使わないお金をプールしておき、いざという時に出金するという使い方だ。証券口座の入出金にかかる手数料は証券会社が原則負担するところが多いので、手数料を気にせず貯めていける。

貯金代わりに使う場合に知っておきたいのは、証券口座に預けたお金は投資信託で運用されることだ。証券口座には、MRF(マネー・リザーブ・ファンド)という投資信託が使われている。投資信託とはいうものの、普通預金に近い性質で出し入れも自由だ。元本保証があるわけではないが、極めて安全性の高い運用がなされている。

ネット証券の中には、MRFではなく預り金として保管するところもある。預り金も個人のお金として分別管理されるが、金利は発生しない。入金したお金がどのように管理されるのか気になる人は、ホームページで確認してみよう。

4. 証券会社と銀行はどう違う?よくあるQ&A10選 

証券会社と銀行は、他にどのような違いがあるのだろうか。

⑴証券会社と銀行はどちらが店舗数が多いのか?

証券会社と銀行は、店舗数が大きく異なる。生活インフラとしての役割もある銀行は、証券会社よりも店舗数が多い。大手銀行は全国に展開しており、地銀は特定の地域を集中的にカバーする。証券会社は必ずしも店舗を必要としないため、大手でも地域によっては店舗がないところもある。言うまでもなくネット専業の金融機関は、基本的に店舗を持たない。

証券会社と銀行の大手3社の店舗数の違いは、以下のとおりだ(2020年12月7日時点)。

金融機関 店舗数
大手証券会社 野村證券 124
大和証券 174
SMBC日興証券 140
大手銀行 三菱UFJ銀行 552
三井住友銀行 448
みずほ銀行 464
(※各社ホームページより筆者作成)

⑵証券会社と銀行の営業時間や定休日に違いはある?

証券会社と銀行は、営業時間や定休日も異なる。金融機関や店舗によって変わるが、窓口の終了時間の目安は証券会社が15~17時、銀行は15時だ。どちらも土日は原則として窓口は開いていない。ただし、金融機関によってはテレビ窓口を設置したり、窓口の営業時間を通常よりも拡大したりして対応しているところもある。

例えば三菱UFJ銀行はテレビ窓口を設置し、平日だけでなく土曜・祝日も18時まで対応している店舗もある。また、りそな銀行は全店舗で17時まで窓口での対応を行っている。一方ネット専業の証券会社や銀行は、基本的にウェブやアプリで手続きを行うため24時間対応だ。

⑶ネット専業の証券会社や銀行にはどのようなところがある?

ネット専業の主な証券会社や銀行は以下のとおり。証券会社と銀行が同じグループの場合、証券口座と銀行口座の連携によって振替が無料になったり自動になったりするため、利便性も考慮してうまく活用しよう。

主なネット専業金融機関
ネット証券 SBI証券
楽天証券
松井証券
マネックス証券
auカブコム証券
ネット銀行 住信SBIネット銀行
楽天銀行
ソニー銀行
ジャパンネット銀行
auじぶん銀行
GMOあおぞらネット銀行
(※筆者作成)

⑷投資をしたい場合はどのような口座を開設すればよい?手数料はかかる?

投資をしたい場合は金融機関で専用の口座を開設する必要があり、証券会社では証券総合口座、銀行では投資信託口座がそれに当たる。口座開設だけならどちらも手数料はかからないが、銀行では株式や債券に直接投資できないため、投資信託以外に投資したい場合は証券会社で口座を開設しよう。証券会社でも銀行でも、口座開設の際に一般口座と特定口座のどちらかを選択する。

一般口座とは年間損益を自分で計算し、確定申告が必要になる口座のことだ。特定口座では年間損益を金融機関が計算し、「源泉徴収あり」または「源泉徴収なし」を選択する。「源泉徴収なし」を選択すれば確定申告が必要になるが、「源泉徴収あり」なら不要。確定申告の手間を考えて、「源泉徴収あり」の特定口座を選択するのが一般的だ。

⑸NISAやiDeCo(イデコ)の口座は証券会社でも銀行でも作れる?

NISA口座やiDeCo口座のどちらも開設できる証券会社や銀行がほとんどだが、中には一般NISA口座は開設できるが、つみたてNISA口座は開設できない金融機関もある。比較的新しいネット専業の証券会社や銀行でその傾向があるため、将来NISA口座やiDeCo口座を開設する可能性も考えて金融機関を選びたい。

⑹NISAやiDeCo(イデコ)の口座はどこの証券会社や銀行で開設しても同じ?

NISAやiDeCoはどの証券会社や銀行で利用しても、投資できる金額や税制が変わることはない。しかし投資できる商品のラインアップは金融機関によって異なるため、購入できる商品を確認してから口座を開設するようにしよう。

⑺投資信託のリスクは証券会社と銀行で違いがある?

同じ投資信託であれば、証券会社でも銀行でもリスクは変わらない。ただし、同じ投資信託でも購入時の手数料が変わることはある。ネット専業の証券会社や銀行では、購入時手数料を無料としているところも多い。

⑻証券会社の商品は銀行では買えない?

基本的に証券会社の商品は銀行では購入できないが、銀行が金融商品仲介業に登録し証券会社の代理店になっていれば購入できるものもある。銀行で購入するためには、銀行が仲介する証券会社の口座開設も必要だ。

例えば三菱UFJ銀行では、三菱UFJモルガン・スタンレー証券とauカブコム証券の商品を購入できる。商品によっては自らオンラインで発注する必要があったり、購入できる商品に違いがあったりするが、これらは銀行の窓口で相談できる。

⑼証券会社が破綻したら預けているお金や投資信託はどうなる?

証券会社は顧客から預かった金銭や投資信託などの有価証券について、証券会社自身の資産とは区別して管理(分別管理)することが義務付けられている。そのため万が一証券会社が破綻したとしても、原則として自分の金銭や有価証券は返還される。

⑽銀行が破綻したら預けているお金や投資信託はどうなる?

銀行が破綻した場合、当座預金や無利息の普通預金は全額保護されるが、定期預金や利息の付く普通預金は1つの金融機関につき1人あたり元本1,000万円までとその利息が保護の対象だ。投資信託は証券会社と同じく分別管理されているため、銀行が破綻しても返還される。

5.証券会社と銀行は賢く使い分けたい

日常生活では銀行だけを利用していても不便はないが、お金を増やすことまで考えると証券会社を利用したほうがいいケースもある。銀行だけでも多くのニーズに対応できるが、それぞれの金融機関の強みを活かし、賢く使い分けしたほうがいいだろう。

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國村功志
執筆・國村功志
大手証券会社で株式・債券・投資信託などの金融商品販売に携わる。その後、ファイナンシャルプランナーの養成団体やFP事務所を経て、現在は資産形成FPとして活動。個人の資産運用経験も活かし、金融機関や一般の人向けに毎月セミナーも開催。CFP®、証券外務員一種保有。
大手証券会社で株式・債券・投資信託などの金融商品販売に携わる。その後、ファイナンシャルプランナーの養成団体やFP事務所を経て、現在は資産形成FPとして活動。個人の資産運用経験も活かし、金融機関や一般の人向けに毎月セミナーも行っている。CFP®、証券外務員一種保有。

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