「人道支援」と聞くと、世界と米国の役に立っている印象を持つが、マスク氏はUSAIDを「ミミズ(不正・濫用・汚職)が入ったリンゴではなく、ミミズの塊そのものだ。もはや修復不可能だ」と表現している※33)

トランプ氏も「普通ならば、200個の事業のうち、殆どが良い事業で、不要な事業が僅かにあると考えるでしょう。しかし、僅かにあるのは良い事業の方で、殆どが無駄なものだった」と語る。

USAIDなどの行政機関を閉鎖することについて、様々な批判があることは事実だ。理由は「人道支援が途絶えてしまう」、「マスク氏は選挙で選ばれていない」、「世界における米国のプレゼンスが落ちて、中国にその隙を突かれてしまう」などだ。

一部では誤解があるようだが、トランプ氏とDOGEは、人道支援を全て止めると言っている訳ではない※34)。トランプ氏自身もFOXニュースのインタビュー※35)で「良い事業については、マルコ・ルビオ長官が率いる国務省で継続すれば良い」と答えている。

共和党のジョニ・アーンスト上院議員は、USAIDの問題を何年にもわたって追跡してきた一人だ。彼女が2月3日にXのスペース(ラジオ)※32)で明かしたのは、官僚機構の傲慢さと、拠出金の中抜きの実態である。

例えば「ウクライナへの人道的支援」という名目で出金されたお金の詳細を議員として調べようとしたら、USAIDは情報開示を拒んだそうだ。仕方がないので、マッコール下院議員と共に公式の議会調査を開始し、さらに半年ほど交渉した後、ようやく彼女のスタッフはごく限られたデータにアクセスすることを許された。しかし、メモを取ることはできず、ずっとカメラを向けられていた。

しかしその調査で分かったのは、いくつかのケースでは、間接経費率(NICRA)が50%~60%を超えていたことである。しかもこの経費には、下請け業者のコストは含まれていないという。

アーンスト上院議員が挙げたような事例は恐らく氷山の一角で、まさにその事実がトランプ氏やマスク氏が強硬な姿勢に出ている所以であろう。選挙で選ばれた議員が官僚に情報開示を求めることすら困難の極みで、仕組みを改善しようものなら気が遠くなりそうな話だ。しかも、税金であるにも関わらず、中抜きという手法で流れる多額の使途不明金。これはもはや汚職の横行と言えるのではなかろうか。