さらに自分の使者を何度も送り、前払いで預けた金を返してもらおうとしたが、 そのたびに手ぶらで返され、しかも使者は危険な敵地を通らされたと訴えています。
「こんな侮辱を受ける覚えはない。お前だけが、私の使者をこんなふうに扱うのだ!」
ナンニはそう怒りをぶつけます。
驚くべきは、その文面の感情表現の豊かさと、現代にも通じる”消費者の怒り”の構造です。
やや形式的な書き出しこそあるものの、後半に進むにつれ、「何様のつもりだ?」「私はこんな扱いを受ける人間ではない」といった言葉が並び、 思わず現代のクレーム文書やSNSでの炎上投稿と重ねてしまう読者も多いはずです。
では、オッペンハイムによって翻訳されたクレームの全文を見てみましょう。
過激すぎるクレームの全文

「エア・ナーシルに伝えてくれ、ナンニが次のように言っていると。
お前が来たとき、お前は私にこう言った。『ギミル・シンが来たら、上質な銅のインゴットを渡す』と。
だが、お前はその後去り、私との約束を守らなかった。お前は私の使者(シト・シン)の前に、質の悪いインゴットを置いてこう言った。『受け取りたければ取れ、いらなければ帰れ!』
お前は私を何だと思っているのか?そんなふうに私のような者を侮辱するとは。
私はお前に預けてある金の袋を取りに、私たちと同じような身分の立派な使者たちを何度も送った。
しかし、お前は私の使者を侮辱し、手ぶらで私の元に何度も送り返した。それも敵地を通って戻らせたのだ。
ティルムン(当時、大量の銅を取引していた南メソポタミアの交易地)と取引する商人の中で、私をこのように扱った者が他にいるか?
お前一人が、私の使者を侮辱している!
私がほんの1ミナの銀をお前に借りている(かもしれない)というだけで、なぜお前はそんな横柄な口をきくのか?