もうひとつの仮説は「未婚者の方が友人関係や地域とのつながりが豊か」という可能性です。

これまでの調査で、独り身の高齢者は家庭や親戚などの狭い人間関係に縛られず、友人や地域とのつながりを重視して、より広い社会的ネットワークを築いている傾向があることが指摘されてきました。

そうした多様な人間関係が脳への刺激となり、認知的な健康を高めている可能性があるのです。

しかし、これらはまだ仮説の域を出ていないため、今後の調査が必要でしょう。

それでも今回の研究結果は「独り身は不健康」という従来の価値観に見直しを迫るものです。

もちろん、結婚の有無だけで健康や幸福が決まるわけではありませんし、結婚しているからといって認知症リスクが高まるわけでは決してありません。

しかし未婚や離婚、死別といったライフスタイルの多様化が進む今、「独り身でも健やかに年を重ねられる」ことを示す科学的証拠が増えてきたことは、多くの人にとって安心材料になるのではないでしょうか。

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参考文献

Marriage linked to higher dementia risk in older adults, 18-year study finds
https://medicalxpress.com/news/2025-04-marriage-linked-higher-dementia-older.html

元論文

Marital status and risk of dementia over 18 years: Surprising findings from the National Alzheimer’s Coordinating Center
https://doi.org/10.1002/alz.70072

ライター

千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。

編集者

ナゾロジー 編集部