調査開始時点では、いずれの参加者も認知症ではありません。
その後、毎年1回、訓練を受けた臨床医による標準化された評価が行われ、認知症の診断がつけられました。
その結果、追跡期間中に認知症を発症したのは、全体の20.1%でした。
しかし結婚歴と認知症との関係性を見ると、興味深い傾向が見つかったのです。
グループ別で見ると、既婚者における認知症の発症率は21.9%、死別者で21.9%となっていました。
ところが離婚者は12.8%、一度も結婚していない人では12.4%と、独り身の高齢者は明らかに認知症リスクが低くなっていたのです。
統計解析で、既婚者を基準にしたリスク相対値も算出されました。
それによると、
・離婚した場合、認知症の発症リスクは34%低下
・一度も結婚していない未婚者の場合、認知症の発症リスクは40%低下
との結果が出ています。
さらに健康状態、生活習慣、遺伝要因などをすべて考慮したモデルでも、離婚者と未婚者のリスク低下は有意のままでした。
これは「結婚していたほうが健康にいい」という従来の考えを揺るがす結果です。
では、なぜ未婚や離婚の人たちの方が認知症リスクが低いのでしょうか?
なぜ独り身だと認知症リスクが下がるのか?
では、なぜ未婚や離婚の人たちの方が認知症リスクが低いのでしょうか?
この点について、チームはまだ明確な答えを見つけておらず、慎重な姿勢をとっています。
それでもいくつかの可能性を提示しています。
仮説のひとつは「結婚の質の悪さが逆に脳の健康を阻害している」という可能性です。
世間でもよく言われるように、結婚当初は仲睦まじかった夫婦も、年月を経るにつれて話すことも、どこかへ一緒に出かけることもなくなって、仲が冷めてしまうことがあります。
そうなると、互いの存在が慢性的なストレスとなって、認知機能を下げてしまうと考えられるのです。
