トランプ氏はなぜ、全世界を敵にまわすような愚劣な振る舞いをしているのでしょうか。

中国に追い上げられている現状を打開すべく、米国の覇権の再構築を他国の犠牲の上に立って進めようとしているからだと思います。「トランプの手法はディール(取引)だから、乱暴な数字を並べたてており、交渉の進展に合わせて、関税率を下げてくるだろう」、「株式市場も過剰反応して急落している」との指摘はあります。それはありうるかもしれません。

もっとも関税引き上げはトランプ氏の構想の入り口にすぎないような気がします。トランプ氏は三権分立(大統領、連邦議会、連邦最高裁)を崩し、大統領の権限を一方的に広げる「単一執行府論」を持ち出しています。保守系の学者らがずっと提唱し、トランプ復権のために作成した政策提言(ヘリテージ財団)を下敷きにしているともいわれます。

民主党系が多い連邦政府職員の大量解雇、海外援助を担う米国際開発局(USAID)の解体、自身の犯罪捜査に関わった捜査機関への報復、メディアに対する締め付け、権力への批判をいとわない研究者、大学(ハーバード、コロンビアなど)に対する援助削減、憲法が禁じる3期目も探るとの意向など、連日のように米国の理念の体系を崩そうとする情報が伝わってきます。トランプ革命でしょうか。

18世紀型の帝国主義の復活を目指している。中露と対抗するには、相手国と同様、独裁者政治がよいと思っている。そのためには、これまでの同盟国、国際機関の存在を無視する。そんな解説もよく聞かれます。極右の活動家の助言も聞いている。1950年代のマッカーシズム(赤狩り)の再来の指摘まで言われます。トランプ氏は大衆扇動家どころか、ヒトラーに似ているファシスト(独裁者)のようです。

最終段階では、グリーンランドを支配し、北極圏に開拓地を広げるのでしょうか。北極圏に接するカナダにも影響力を広げる。北極圏を囲むように存在するロシアとは戦わない。米ロを中心に主導権を握る。地球温暖化で北極圏航路は今後、発展するとみて地球温暖化は歓迎で、パリ協定には背を向ける。