さらに、コンピュータでの構造予測ソフト(たとえばAlphaFoldなど)が進歩している今、実験結果を機械学習で解析して補完するのも有力です。
もし爆発フットプリントを何千、何万と集めれば、そのデータを学習させることで、未知のタンパク質がどんな立体構造を取りやすいか自動推定する…といった道も開けるでしょう。
つまり従来の「結晶化してX線回折を解析する」という手順とはまったく違う形で、生体分子の構造に挑む未来が見えてきます。
こうした点を踏まえると、今回の結果は単なる「爆発シミュレーションの成功」という枠を超えて、“壊れる瞬間”を活かすという新たな考え方を打ち出した、といえます。
結晶化という大きな壁、装置の制約、時間分解や配向などさまざまなハードルを乗り越える糸口として、クーロン爆発の解析が有望な選択肢となることを示唆しているのです。
今後、実験面での改良や理論的モデルの進化に伴い、この手法がどこまで一般的なツールになっていくのかが注目されます。
タンパク質を“爆発させる”という、一見奇抜な発想が、構造生物学の世界を大きく変えるかもしれません。
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元論文
Protein Structure Classification Based on X-Ray-Laser-Induced Coulomb Explosion
https://doi.org/10.1103/PhysRevLett.134.128403
ライター
川勝康弘: ナゾロジー副編集長。 大学で研究生活を送ること10年と少し。 小説家としての活動履歴あり。 専門は生物学ですが、量子力学・社会学・医学・薬学なども担当します。 日々の記事作成は可能な限り、一次資料たる論文を元にするよう心がけています。 夢は最新科学をまとめて小学生用に本にすること。
編集者
ナゾロジー 編集部