たとえば“コンパクトに折りたたまれた形”と“伸び伸びと広がった形”がわずかに違うだけでも、破片の飛び散り方が変わってくる。
しかも“まったく同じアミノ酸配列で折りたたみがごく一部だけ異なる”ようなケースでも、爆発後のパターンだけで見分けがついたのです。
こうした結果は、従来の手法ではなかなか見抜きにくい微妙な差を、何と“分子が壊れる様子”から捉えることができたことを意味します。
なぜこれが革新的といえるのか?
それは、結晶化や複雑な測定準備をしなくても、たとえタンパク質が壊れてしまっても、その壊れ方を正確に観察すれば、元の構造情報を引き出せるかもしれないからです。
今までなら「分子が壊れたらデータは終わり」という発想が当たり前でした。
ところがこの研究は、「壊れる瞬間」をデータとして活用するという逆転の発想がどれほど有用かを示しました。
これによって、従来法では扱いにくい柔軟な分子や一時的な構造変化を、クーロン爆発のパターンだけで見極められる未来が来るかもしれません。
いわば、最初は“花火が終わると消えてしまう”と考えられていたのに、火花の軌道から玉の組成や火薬の配合を推定する—そんな離れ業が本当にできるようになる可能性を示した点が、今回の最大の見どころです。
壊れる瞬間から逆算する、分子の真実
