これは、双子の赤ちゃんを遠目に見ると区別がつかないのに、少し近づくと「あれ、こっちは眉毛がちょっと違う」と気づくようなもの。
こうした細かい差まで爆発パターンで見分けられるのかは未知の領域でした。
そこで今回研究者たちは、あえて「似た構造や配列を持つ複数のタンパク質」に狙いを定めて、爆発から生まれる“フットプリント”(飛び散りの分布)だけを頼りに、どこまで区別できるかを徹底的にシミュレーションで検証することにしたのです。
花火のように散る破片が語る、タンパク質の姿

この研究では、タンパク質同士のわずかな違いを「クーロン爆発の仕方」で見分けられるかどうかを確かめようと、まず複数の“そっくりさん”タンパク質を用意しました。
たとえば、「同じタンパク質が1つだけある状態」と「2つくっついている状態」だったり、「アミノ酸配列は同じだけど折りたたみがちょっと違う形」だったり、双子や三つ子といった“兄弟分子”をあえて選んだわけです。
どれもパッと見にはほぼ同じに見えるので、果たして爆発させるだけで区別なんかできるのか、とても不思議に感じるかもしれません。
とはいえ、実際に巨大な装置を使って分子を本当に爆発させるのは手間もコストもかかります。
そこで研究チームは、スーパーコンピュータ上で「超強力なX線レーザーをタンパク質に当てたらどう弾け飛ぶのか」を緻密にシミュレーションすることにしました。