中国が、イギリスが主導する「有志連合軍」への参加を検討しているかのような荒唐無稽なドイツ紙の報道は現実離れした虚偽だ、と言っているにすぎない。

この件は、むしろ逆に中国が、イギリスが主導しようとして混乱を見せてしまっている「有志連合軍」などとは全く違う枠組みで、つまり最も有力には国連安全保障理事会決議を伴った国連ミッションで、参加して貢献することに十二分な関心を持っているかもしれないことを示唆している。

日本の自衛隊がウクライナで活動できないか、という話題を、ちらほらと目にするようになった。伝統的には、障壁は国内法制度である、と考えられる。確かに、それは正しい。自衛隊の海外活動をめぐる法制度は、特に国際平和活動への参加の面において、まだまだ非常に曖昧模糊としており、弱い。

だがウクライナの場合には、さらに複雑かつ繊細な政治的性質の問題がある。自衛隊は、南スーダンであれば国連PKO、イラクであればアメリカ軍の圧倒的な存在を大前提にして、海外での部隊派遣の活動を進めた。しかしウクライナにそのような存在はない。現在話題となっているイギリスの構想は、控えめに言って曖昧模糊としており、正確に言えば混乱したものでしかない。

もしウクライナでの貢献を考えるのであれば、世論迎合的な感情論で押し切ろうとする考えを捨て、徹底的に緻密に政治分析を行い、しかもその結果を作戦行動に反映させることができる体制を整えることを、何よりも重視していかなければならない。

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