また、資料の中では「運転開始予定の2030年12月には影響しません」と説明していますがこれが強弁だったことは、1年後の三菱商事社長の記者会見「ゼロからの見直し」で明らかになってしまいました。おそらく入札した時点では、詳細な検討もつめないで、売電価格を安く入札しても、後は工事会社と調整すればなんとかなる程度の判断で売電価格を決めたのでしょうか。
しかし、日本の風力発電設備に関する基準はヨーロッパの基準よりはるかに厳しいです。詳細設計に入って、ヨーロッパの風車をそのまま日本に持ってきても認証手続きが通らない。価格も工期も今になって、見通しが甘かったことがようやくわかった、と私は見ています。
それを「新型コロナウイルス渦やロシアによるウクライナ侵攻」のせいにするのはどうしたものでしょうか?その検討の甘さを見抜けず売電価格の安さに飛びついで、落札者を決めた経産省も経産省だと思いますが。
3. 撤退となればエネルギー基本計画は大幅後退
国の第6次エネルギー基本計画では、2040年度には洋上風力の導入量を5.7GWとしています。ラウンド1~3を加えても4.6GWにしかなりません。ラウンド4はルールの改定や海域の選定などで遅れそうです。ここで三菱商事が事業主体になっている、ラウンド1の1.7GWが撤退した場合、事業者選定の終わった分は2.9GWまで減ってしまいます。

表1 洋上風力発電公募ラウンド1~3までの想定発電容量
仮に、今の時点で1.7GWの事業撤退をする場合の、保証金の額は約306億円になります。再エネ事業者としては、このまま風力事業を進めた場合、306億円以上の損失が出ると判断すればやめるし、損失が出るとしてもそこまではいかないと判断すれば事業を進めるだけの話です。
電力の供給に貢献したいというファクターはそこにはありません。電気が足りなければ、大手電力会社に助けてもらえばいいことです。