ドイツの石炭火力は遅くとも2038年までに段階的に廃止される予定であるが、緑の党が主張するような目標年限の前倒しには両党ともに否定的だ。メルツ氏は、電力供給の安全性が保証されるまでは石炭火力発電所の閉鎖は行わないと明言している。

連立協議において原子力発電をめぐって議論が対立する可能性は低い。CDU/CSUは2024年4月に運転停止した3基の原発が技術的にも財政的にも妥当なコストで再び稼働できるかどうかを検討したいとしているが、事業者や研究者はその可能性やメリットに疑問を呈しており、実現する可能性は高くない。

前政権を構成していた中道左派(SPD)、緑の党が敗北し、中道右派(CDU/CSU)、極右(AfD)が躍進するという選挙結果であったが、AfDを排除した結果、エネルギー温暖化政策は前政権と大きく変わらないものになるだろう。

非現実的とも思える脱炭素目標を見直さなければ、ドイツ国民、産業が苦しんでいるエネルギーコスト問題の根本的解決にはならないだろう。CSD/CSUとSPDの大連立で移民問題、エネルギーコスト問題等、国民の不満の強い様々な問題が改善しなければ、次の選挙ではAfDが更に議席を伸ばすこととなり、遅かれ早かれAfDの政権参加が実現するとの見方もある。

ドイツのエネルギー温暖化政策が本当に変わるのはその時かもしれない。