ウクライナのゼレンスキー大統領こそが、精神不安定な状態にあると言わざるを得ない。オーバル・オフィスで声を荒げて口論を挑んでみたと思ったら、トランプ大統領との関係改善を懇願するような声明を出してみたりする。そして自分も和平合意を望んでいると発言してみながら、プーチン大統領との交渉には否定的だ。
過去3年にわたり、ヨーロッパの指導者たちは、「ウクライナは勝たなければならない」と発言し続けた。そのような発言を裏付けていたのは、「超大国アメリカがこっち側だ」という感覚であった。ところが今やそのアメリカがウクライナへの武器支援・情報支援を差し止めたりしている。
ヨーロッパは、アメリカを見限って「ウクライナは勝たなければならない」主義をどこまでも貫いていくか、あるいは“しれっと”そんなことを言っていた過去をなかったことにして誤魔化しに入るか、選択を迫られている。
口では、アメリカなしでもヨーロッパだけでロシアに勝利を収めることができるかのようなことを語る者もいる。しかし過去3年間の巨額の軍事支援をもってしても、ウクライナ軍はロシア軍に勝てていない。それどころか、ゼレンスキー大統領は、クルスク州に侵攻するといった合理性のない作戦に資源を投入し、結果としてロシア軍の優勢を招いてしまっている。
ロシアに対する経済制裁も掛け声倒れで実効性がないだけでなく、しかも欧州諸国に物価高のブーメランとなって跳ね返ってきている。この上さらに「ウクライナへの支援を倍増します、期限は設けず半永久的に続けます」と言って、「仕方がないんだ、なぜなら『ウクライナは勝たなければいけない』んだから!」という説明だけで、なお国内選挙に自分が勝利し続けることができると思っている指導者は、皆無だろう。
そもそもまずゼレンスキー大統領自身が、「ウクライナは勝たなければならない」主義を貫くことによって、自分は選挙に勝利できると考えているのか疑わしい。