最後に筆者の評価を蛇足する。その前に事実確認について一言、スタイルズの記事は触れていないが、気候変動問題でヴァンスがCO2との関係を否定したのに対し、司会者は「それは多くの科学者の間の定説です」と捨て台詞の様に述べもしていた。

ウォルズの態度や話振りは冒頭の通りだが、話の内容もまるで「ミネソタ州知事選の演説」だった。すなわち、中絶問題でも、銃規制でも、不法移民でも、凡そ全てにおいてミネソタ州の事例や、もしくは聞く者の同情を誘う1~2の事例を持ち出す。が、人口600万に満たない一介の州の知事と、全米3.3億人を統べる超大国の副大統領とを同日の談とすること自体、連邦No.2としての資質の欠如を物語る。

一方のヴァンスは、スタイルズが書いている様に、いくつかの質問の答えの多くを必ずバイデン政権の副大統領たるカマラ・ハリスの責任に帰結させた。筆者は7月27日の拙稿「スタッフの92%がこの3年間で退職したハリスの人望と政策」で次のように書いた。

スタッフの92%がこの3年間で退職したハリスの人望と政策
秘書やスタッフの離職率の高さは政治家の人望を測るバローメータの一つだ。自民党総裁候補の某幹事長や某デジタル相なども、そのせいか実績の割に人気がない。バイデンがメモやプロンプターで4年近く隠蔽してきた老衰ぶりを先の討論会で露呈し、急遽民主党の...

さて、候補を降りたバイデンが「核のボタン」を委ねられ続ける矛盾はあと半年間だが、それはまたハリス元来の左傾した主張が、バイデンのVPであり続ける彼女の言動に大きな制約をもたらす期間でもある。民主党の「エリート」が急拵えしたバイデン降ろし・ハリス擁立のこうした矛盾を、トランプが突かない訳がない。

つまり、11月5日の投票日にも、ハリスがこの3年半と同様に「バイデンのVPであり続ける」ことこそが彼女の最大の弱点なのである。トランプは、討論会に入念なリハーサルで臨んだハリスに対してその点を突き損なった。が、ヴァンスはウォルズを相手に、見事にそこを突いた。ウォルズは終始返答に窮し、「顧みて他を言う」答えしか出来なかった。