私は、キャッシュ・ディスペンサーと揶揄されていた1990年代の日本外交に立ち戻るかのような、財政支援オンリーに見える岸田政権のウクライナとガザへの対応には、批判的な眼差しを向けている。しかし岸田政権は、日米同盟堅固の観点から、アメリカの意向にそったキャッシュ・ディスペンサーの役に徹するという覚悟の点で、一貫性はあったとは言えるだろう。
石破氏も、大枠では岸田政権の路線を踏襲する、というのが、基本的な理解にはなるのかもしれない。しかしロシア・ウクライナ戦争も、中東の危機も、深刻度が累積的に高まり、出口が見えない閉塞感の圧迫が、米国そのものと行動を共にしている米国の同盟諸国に及んでいる。岸田政権時代よりも、さらに情勢は厳しくなる。
折しも中東では、イスラエルのレバノン攻撃が激しくなっている。ヒズボラが拠点を持つ南部のみならず、首都ベイルートにも激しい爆撃を行った。ほぼ完全にレイムダック化しているバイデン政権末期の間に、思いつく標的を全て爆破してしまおうというイスラエルの過激な行動が過熱している。

レイムダック・バイデン期に拡大する中東と欧州の戦争
以前にレイムダック化したバイデンの残り任期は、非常に危険な期間であることを指摘した。特に中東と欧州だ。
アメリカの軍事支援に依存するイスラエルとウクライナは、アメリカの大統領選挙の行方を、かたずをのんで見守っている。トランプ氏...
バイデン大統領の中東政策は全く機能しておらず、ハリス氏にはまだ中東政策など存在していないような状態だ。ロシア・ウクライナ戦争については、停戦に向けて大きく動こうとしているアメリカの共和党大統領候補のトランプ氏も、イランとの対立構図にそっている限り、選挙中はもちろん、その後もイスラエルの行動に口は出せないだろう。中東の行きつくところが見えない泥沼の混迷は深まる一方で、石破政権も、危機の波及度を軽視すると、痛い目にあう可能性がある。