とすれば、金額は多いものの、多くの者は規正法違反の認識のない、即ち犯意のない議員である可能性が極めて高い。であれば、岸田氏は自民党総裁として、前述の実態を正直に述べ、「裏金問題」でもなければ、派閥を解消すべき事案でもない、と強弁し続けるべきだったのだ。

犯意の有無を蔑ろにする岸田自民党の迷走
刑法上の「故意」について『世界大百科事典』(旧版)は大要次のように言及している。 刑法では、過失を処罰する特別な規定のない場合には、故意のないかぎり犯罪は成立しないので、故意の意義が重要な問題になる。刑法上の故意とは、犯罪を犯す意思(犯意...

そういう対応をしておけば、派閥を解消する必要も、また総裁を辞する必要もなかったし、総裁選で「政治と金」が争点になることもなかったろう。二桁の秘書を雇えば5~6千万の金が掛かるから、派閥のパーティーをせずに議員をやれるのは、世襲か大金持ちの御曹司に限られてしまう。それが日本にとって良いことか。ことほど左様に岸田氏はこの問題の対応を誤ったのである。

従って、筆者に言わせれば、「自民党が『政治とカネ』を巡る問題で失った信頼を取り戻すため、一度はあきらめた総裁選への再挑戦を決意した」などという石破氏の言い分は、ピント外れも甚だしいという他ない、烏滸の沙汰なのだ。

② 「アジアにおける集団安全保障」を提唱するが、今回は持論とする憲法9条2項の全面削除は訴えず、9条に自衛隊を明記する自民の「改憲4項目」の実現を目指す。

中国を脅威と見做して抑止力を強化するための「アジア版NATO」など機能し得ないことは、ベトナムが共産主義国であり、また他の東南アジア各国が中国の札束と武力の威嚇で容易に屈伏してしまう経済や軍事の状況であることに鑑みれば、明らかであろう。

筆者はそれよりも、日・韓・台・比・豪の連携を強化し、中国の原潜をこの5カ国を結んだ線から東へ出させない同盟関係を結ぶことが重要と思う。韓国と豪州の軍事協力は既に強固だ。またトランプが大統領になれば、米国が金を出さずに中国を封じ込められるこの案に必ず乗ると思われる。その先には、日本が米国から原潜と核ミサイルの技術供与を受け保有する、「核による拡大抑止」がある。

抑止力として誇示すべき「戦う意志」
19日の「産経新聞」に、2月17・18日に行われた「産経・FNN合同世論調査」の結果が載っていた。筆者は以下の2問に興味を持った。 【問】ロシアのウクライナ侵攻開始から今月で2年となるが、日本を含む西側諸国からの今後のウクライナ支援はどう...