そもそもこれらの二つの事案は、21年1月の大統領就任早々にバイデンが署名した大統領令、すなわち「国境の壁の建設中止」と「キーストーンXLパイプライン工事差し止め及びシェールオイル・ガス開発業者への新規国有地賃借禁止」に端を発した、今も存続しているバイデン政権の政策であり、ハリスは今もその政権の副大統領なのである。
筆者は別の拙稿でバイデン政権が続く中で行われる大統領選について、「それはまたハリス元来の左傾した主張が、バイデンのVPであり続ける彼女の言動に大きな制約をもたらす期間でもある」と指摘した。
スタッフの92%がこの3年間で退職したハリスの人望と政策
秘書やスタッフの離職率の高さは政治家の人望を測るバローメータの一つだ。自民党総裁候補の某幹事長や某デジタル相なども、そのせいか実績の割に人気がない。バイデンがメモやプロンプターで4年近く隠蔽してきた老衰ぶりを先の討論会で露呈し、急遽民主党の...
不法移民での政策変更が接戦州の一つアリゾナ州を意識したものであり、フラッキング容認がペンシルベニア州を念頭に置いたものであるのは明らかだ。
ダナ・バッシュはその場当たり的な部分を追求すべきだったし、10日の討論会でトランプが争点にするのもこうした政策変更であるべきだろう。だがここまで書いて筆者の頭をかすめたことがある。その一つは、例えば河野太郎の「反原発封印」だ。それは「原発推進」への「宗旨替え」ではなく総裁選向けの「封印」である。
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そこで有権者は、政治家のこうした「豹変」あるいは「変節」をどう考えるべきなのだろうか。「豹変」とは元来好ましい変化に使う語なので、候補者の主張が自分の思想信条に合うものに変わるなら「豹変」だし、その逆ならあの候補「変節」した、といった言葉の使い分けになる。
そこでハリスの「(私の)価値観は変っていない」に戻れば、上院議員の中で最も左派急進的だったとされる彼女の「価値観は変っていない」のであれば、不法移民のこともフラッキング容認のことも、選挙期間中だけ「封印」したに過ぎない、と考える方が筆者の腑に落ちる。